児童誘拐や変質者のいたずらが私たちの近所でも数件おこっています。そのため、私も知らない人に声をかけられたら、相手にしないで逃げなさいと、空未に言っていました。小学校でもそのような注意をされています。

空未と二人でファミリーレストランで食事をした時、空未の注文した「お子さまランチ」をウエイトレスさんが忘れていて、何時までたっても運ばれてきません。私がウエイトレスさんに文句を言ったら空未に言われました。

11月の寒い日の夕方、暗くなったので空未と一緒に、遊びに来ていたあゆみちゃんを家まで送って行った時のことです。寒かったので何気なく自分の子どもにだけ「空未、寒くない？寒かったらかあさんのかしてあげる。」って言ったら、その時空未は「大丈夫、寒くない。」と返事しました。そしてあゆみちゃんを家まで送りとどけた後の帰り道、二人っきりになった時に空未に言われました。

空未と一緒にマンガを描いていた仲良しの友達が「大人になったら、二人で一緒にマンガ家になって、死ぬまでずっと一緒だといいね。」と言った時に空未がその友達に答えた返事です。これも空未が亡くなった後にその友達から聞きました。一輪車の時の友達とはまた別の子です。

台所仕事をしていた時に空未に言われました。１年前に学校の広報誌で障碍児学級の取材をし障碍児にも障碍児のお母さんとのかかわりを持ったことがあるのですが、「かわいそう」というイメージしか持てませんでした。空未は運動会の時も、合宿の時も、障碍児の友達と手を繋いで行動を共にしていました。そして学校から帰ると障碍を持ったその子と楽しく心を交わし会えたことを嬉しそうに話してくれていました。私は障碍児の子供ともそのお母さんとも距離をおいたつきあいしかできませんでした。

でも、あれから２年過ぎ、今ではホームヘルパーをしながら障碍を持った人たちとも自然体でおつき合いができるようになりました。障碍を持つということは「かわいそう」や「お気の毒」ではなく、「尊敬すべき人」だと気付きました。五体満足な私はいかにごう慢であったか気付かされました。障碍を持つ人たちは純粋な謙虚な心を持つ事ができる尊敬すべき素敵な人たちです。

亡くなる１週間くらい前だったと思います。私が台所仕事をしていた時に、目を輝かせてスッゴイいい顔でニコニコして私に話してくれました。「人生最大の喜びだ、感激だ」というところから後は、勿体ぶってなかなか話してくれなかったのですが、私が何があったのかと、しつこく聞いたので話してくれました。私も子供の頃から危険な遊びが大好きで、父親も祖母も危険な遊びの自慢話しをしていました。これは遺伝だ、確かに危険な遊びはワクワクして人生の中でも格別楽しい思い出になっています。その時は、まさか危険な遊びで命を落とすなどと思いもよらず、私も子供時代にやった危険な遊びの思い出を話すだけで「危険な遊びをしてはいけません。」とは言えず、「お母さんは危険な遊びをしたけど、成功したから死ななかっただけ。危険な遊びは失敗したら死ぬんだよ。」と言っただけでした。