■ あらゆるトレンドに便乗した、ジャニーズ初のバラドル 今回のお題目はシブがき隊。 芸能史的には、これまでのジャニーズで主流だった"王子様路線"から、ちょっと外れた色物アイドル・徒花的存在としての評価に留まるのがせいぜいの彼等であるが、世間一般では、既成のアイドルには無かったヤンチャぶり・お笑いセンス・奇妙な楽曲群等が記憶に根強く残っていて、今もなお、支持の高いアイドルである。 当時からレコードセールスの数値以上に、潜在的なファンは多かったようにも思うし。 まず初めに、シブがき隊の結成からデビューに至るまでの経緯を簡単に説明。 そんな彼等であるが、シブがき隊という名称通り、ジャニーズ伝統の"王子様路線"を踏襲することなく、"悪がきキャラ"を軸としながらも、実際にレコードデビューしてみると、やはり先輩の"たのきんトリオ"を意識した構成になっていた。 ただ、彼等の楽曲そのものは、"たのきん"の中でもマッチの路線に近い、つまりヤンチャ系。 これだけでも、シブがき隊の個性は明確なのだが、彼等の最大特徴は、何といっても"お笑いセンス"である。 こうした考察からすると、シブがき隊というのは、従来の王子様路線を踏襲することなく、当時のあらゆるトレンドを貪欲に取り入れた(便乗した)、時代の先端を行った実験性の強いグループであると言えよう。 (1) たのきんトリオのバリエーション 当のシブがき自身は"色物扱い"されたりして、芸能界では"冷遇"に近い処遇で、真っ当な評価は受けず終いであったが、彼等で試みられた実験は、後の芸能界において、あらゆるタイプの後続タレントを輩出したことで、見事に結実したと言える。 かようにシブがき隊というのは、後世に多大な影響を与えた偉大なグループなのである(と思う)。 最後にメンバー各人に対する感想を少しだけ。 ● 本木雅弘 『ヤンヤン歌うスタジオ』『レッツゴー・アイドル』といった、歌番組でのコントでは抜群の冴えを見せた芸達者な彼だが、特に女役で光るものがあった。 ● 薬丸裕英 『はなまるマーケット』での司会ぶりが板に付いたおかげで、現在ではすっかり"父親代表"、もしくは"TBSの顔"といったタレントに成長した感があるが、司会者としては"仕切り能力"が欠けているように思える。 ● 布川敏和 シブがき隊時代から、ほとんどキャラクターは変化していないと思う。 (2000.4.13) |
■ ジャニーズ系としては規格外な"バンカラぶり"が面白い作品 シブがき隊のデビュー曲。 普通、ジャニーズ系のデビューシングルと言えば、サウンド・歌詞等、非常に緻密な計算の元に構成された、極めて完成度の高い、洗練された力作が多いのだが、この作品は例外といっていいかもしれない。 曲はマイナー調で、「サビ→A→A'→B→サビ」という、頭サビの構成。 サウンド面で特に問題は無いのだが、3人の歌唱はちょっと問題アリかも。 歌詞は大雑把というよりはアナクロな印象。 主題は特に存在しないのだが、何といっても この作品、サウンドが骨太で、歌唱は大雑把、歌詞・タイトルが時代錯誤。 私事で恐縮だが、シブがき隊がこの曲でデビューした1982年5月5日、私は病床に伏す田舎の祖父を病院へ見舞いに行ったのであるが、当時私は小学生で、日がな一日病院に居ても退屈でやることが無く、結局ずーっとTVを観ていた。 で、何気なくTVを観ていたのであるが、シブがき隊は、この日、一日中TVに出ずっぱりであった。 (2000.4.13) |
■ キャンディーズを参考にしながらも、完成度は高い作品 前作はアナクロなうえに、大雑把で骨太な作品であったが、今回はシブがき隊にとって、初のCMソング(スナック菓子CM、本人たちも出演)ということもあってか、かなり完成度の高い仕上がり。 曲はマイナー調で頭サビという、前作同様と同系統だが、大まかな構成は「サビ→A→サビ」で、前作よりもシンプル。 歌詞は2作目にして、早くも性衝動がテーマ。 かように、この作品は、サウンド・歌詞の両面で優れており、傑作と呼んで差し支えないのであるが、全体的にはキャンディーズ「危い土曜日」をモチーフにはしていると思う。 (2000.4.13) |
■ 「ヤンチャ」と「哀愁」の融合を試みて失敗に終わった凡作 タイトルだけ見ると「NAI NAI
16」の姉妹作、もしくは続編かと思われるが、両者にはとりたてて共通項・連鎖は無い。 それどころか、破天荒なバンカラ路線だった「NAI
NAI〜」に対して、今回は正反対の"哀愁"路線。 曲は相変わらずのマイナー調&頭サビだが、構成は「サビ→A→サビ→B→サビ」という、ちょっと珍しい作りになっている。 各パートは、まぁまぁのメロディだと思うが、構成が良くない。 作詞は森雪之丞が外れて、今回は三浦徳子。 この作品では、"哀愁路線"という、シブがき隊の新境地を開拓しようと、サウンド・歌詞の両面で、"ヤンチャ"と"哀愁"を融合させるべく、頑張りを見せた意欲作ではあるが、気合が空回りした感が強く、あまりイイ出来とは言えない。 (2000.4.13) |
■ シブがきサウンドの要、"フックンヴォーカル"の開花 有名な話だが、この作品は「ZIG
ZAG セブンティーン」との両A面シングルである。 作詞は「ZIG ZAG〜」と同様、三浦徳子が担当。 曲は相変わらずのマイナー調&頭サビ。 この作品、サウンド面で欠点は見当たらず、歌詞もアクの無い手堅い作りだし、傑作と呼んでいいと思う。 (2000.4.13) |
■ そのものズバリのSEX描写、アイドル史上稀に見る問題作? 一応説明しておくが、このタイトルは「ヴァージンショック」と読みます。 なんだか中国語みたいな字面だが。 曲はまたしても、マイナー調&頭サビ。 構成は「サビ→A→サビ→B→サビ」で、「ZIG
ZAG セブンティーン」と似ている。 かように、この作品は、SEX直喩型という、アイドル歌謡らしからぬキワモノ・エログロ路線である。 (2000.4.13) |
■ 男・シブがき隊、2年目突入! ヤンキー路線の幕開け これも一応説明しておくと、タイトルは「ゾッコンラブ」と読みます。 作詞には森雪之丞が復帰。 男臭い"ヤンキー路線"には、女流作家のデリケートな感性は不要との判断か。 作曲・編曲は井上大輔が外れて、今回は水谷竜緒(誰?同時期に村下孝蔵「初恋」とか編曲していたけど)。 この作品、ダンスが主流のジャニーズ系では異色のメタルサウンドで、しかも主題がヤンキーという、珍しい作品である。 (2000.4.13)
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■ シブがき隊のもう一つの顔である お笑い路線の萌芽 前作「Zokkon命」より始動した"ヤンキー路線"であるが、今回、それは少し影を潜めるものの、"遊び人繋がり"という形で、前作のテイストは継承されている。 作詞は引き続き、森が担当。 ディスコで見つけたイイ女をナンパして一夜を過ごし、ついには自分に惚れさせるという、そのプロセスを克明に描いて、"ナンパ師の美学"を表現している。 曲はマイナー調で頭サビ。 構成は「サビ→A→B→A→B→C→サビ」という作り。 この作品で、"シブがき隊"というタレント自体の本質とも言える"お笑い路線"が楽曲面でも萌芽し始めた。 ちなみに、この森&後藤のコンビは、同時期に女性アイドルのソフトクリームも手掛けているが、3人組・性典ソング、といった共通項から、このソフトクリームをシブがきとは"対"であるように捉えてる向きが多い。 (2000.4.13) |
■ "ニの線"狙いのはずが、結果としてギャグになってしまった珍作 これもタイトルの読み方を一応説明しますが、「ちょうはつ むげんだい」と読みます。 作曲には久々に井上大輔が復帰。 作詞には初めて売野雅勇が起用された。 この作品、曲構成上、パート毎にカラーが異なるうえに、歌詞は大袈裟で、しかもセリフ付きという、かなり珍しい作品である。 いささかジャンル分けがしづらいが、組曲風でもないし。 う〜む、宝塚調とでもいうのだろうか? (2000.4.13) |
■ 画期的なサウンドに対して、詞のまとまり無さが残念な作品 TBS系ドラマ『噂のポテトボーイ』主題歌。 もちろん主演はシブがき自身。 作曲・編曲には、後藤次利が復帰。 曲構成は「A→B→B→C→D→D'→E」という按配。 サビメロはD・D'・Eで構成。 大充実のサウンドに対して、歌詞は今一つ。 この作品、アイドル歌謡としては画期的ともいえる、大充実のサウンドに仕上がったのに、売野の歌詞がどうにも中途半端で損をしている。 (2000.4.13) |
■ シブがき隊の最高傑作 今作で、デビュー3年目を迎えたシブがき隊であるが、従来の"ヤンキー&硬派路線"はそのまま継承していて、大きな軌道修正は見受けられないものの、ただ3人の成長に合わせて、主題にのみ、少しだけ変化が見られる。 今回の主題は、「昨夏に遊んで棄てた女への慕情」がテーマで、これまでに無く、主人公が純情なんである。 それから今回は、サウンドまで完成度が高いのである。 この作品、歌詞・サウンド、両面で非常に完成度が高いという、充実の仕上がりとなった。 (2000.4.13) |
■ 「お子様向け」と「シブがき調」が似て非なる物だと立証された駄作 NHK人形劇『ひげよさらば』のテーマソング。 正規のシングル盤ではなく、今回は企画盤といっていい。 作曲・編曲は井上大輔が担当。 お馴染みのマイナー調で、「A→A→B→A’→C→C’→A’」といった曲構成。 これに対して、歌詞はちょっと興味深い作りである。 この作品、サウンドに見るべきものは一切無いし、歌詞も「お子様向け」だか「シブがき調」だか、白黒着かない消化不良で、ハッキリ言って駄作である。 どうせ企画盤だし、作家陣にもやる気がでないんだろうか? 前々から気になるのだが、ジャニーズ系は時々、子供番組やアニメとのタイアップで、シングルリリースすることがある。 少年隊「Lady」、忍者「おーい!車屋さん」、そして今回の「キャッツ&ドッグ」のように。 (2000.4.13) |
■ これまでの"シブがき要素"を全てミックスした集大成 この作品は力作だと思う。 サウンド・歌詞・歌唱・タイトル、いずれの面でも、これまでシブがきが打ち出して来た独自のファクターを全て寄せ集めたかのような趣きで、"シブがき集大成"とも呼べる仕上がりになった。 作曲は、前作同様に井上大輔が担当。 お馴染みのマイナー調で、「A→B→C→D→D'→E」という曲構成。 売野の歌詞も、今回はメチャクチャに頑張っている。 タイトルは「サムライ・ニッポン」同様の"勘違いジャパネスク"、もしくは『週間地球TV
/ 奇妙な果実』路線(誰も知らないか)であるが、こっちのほうがバカ指数は高い。 かように、この作品は、"シブがき集大成"の如く、サウンド・歌詞の両面で頑張りを見せた、「シブがき隊・入魂の一作」ある。 振り付けにしたって、これまでに無く、ド派手な振りだったし。 (2000.4.13) |
■ ジャニーズの定番に成り損ねた(?)意欲作 前作「アッパレ!フジヤマ」にて、手持ちのカードは全て使い果たした感のあるシブがき隊だが、おかげで今回は、新境地開拓の意欲が充分に垣間見得る作品に仕上がった。 ちなみに、このタイトルは「べらんめぇダンディー」と読みます。 説明無しでは難読極まりない、おマヌケなタイトルは、まんま従来路線であるが。 作詞担当は森雪乃丞が復帰。 作曲・編曲は水谷公生が担当。 曲はマイナー調で、構成は「A→A'→B→C→サビ」といった按配。 この作品、歌詞・サウンド、共に従来の"シブがき路線"とは一味違った手法で、新境地を開くべく、頑張りを見せた意欲作であるが、歌詞の頑張りに比べて、サウンドの成果は今一つで、ちょっとハズしてしまったのが残念である。 それにしても、ジャニーズ事務所はこの手の作品が好きだなぁ。 (2000.4.13) |
■ 派手な作風ながらも不思議と倦怠感が漂う作品 「キャッツ&ドッグ」あたりから事務所側のシブがきに対する冷遇ぶりが萌芽してきたが、もう今回まで来ると、その冷遇ぶりはいよいよ顕著になってきた。 岡本の曲はマイナー調&頭サビで、「サビ→A→A→B→C→サビ」という曲構成。 作詞は前作の漣センスとはちょっと異なり、今回は"数え歌"。 戦後歌謡っぽいテイストは一応踏襲している。 この作品、歌詞は優れているしサウンドも手堅い作りで、決して悪い作品では無いのだが、かといって、傑作とも言い難いという、どうにも煮え切らない仕上がりである。 (2000.4.13) |