今回のお題はアニメソング。 いささか唐突ではあるが。 僕自身、アニメそのものにはさほど関心はないが、アニソンは結構好きなのだ。 というのも、予算や表現等において、アニソンの製作条件は制約が厳しく、その締めつけの中で、スタッフたちは作品に個性を出すべく、その才覚を結集して知恵や趣向を凝らさねばならず、結構クリエイティブな姿勢が要求されるはずだし、それ故に、スタッフの才能・情熱は歌謡曲と同等だと思うから。 まず、TVアニメは主な視聴者層が子供であるという点。 これが様々な制約を生むのだ。 こうしてアニソンは、子供を対象にして様々な条件下で制作されるわけだが、制作側としてはちゃんと採算ベースに見合うことが大前提だという。 こうした諸々の条件を見事にクリアしたものが、商品として流通されるのだから、アニソンが面白くないわけが無い。 (2000.2.1) |
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作品レビュー
● TVアニメ第1号にして「ヒーロー物主題歌」の定型が既に確立 TVアニメ第1号「鉄腕アトム」の主題歌で、作詞に谷川俊太郎が起用されている。 それはともかく、歌詞は簡潔にして意味明瞭な仕上がり。 サウンドはメジャー調のマーチだ。 この作品、TVアニメ第1号にもかかわらず、歌詞・サウンド両方の面で、既にヒーロー物主題歌の定型として確立されているのがスゴイ。 まぁこれ以前のラジオドラマや実写ドラマの主題歌で、既に雛型はあったかもしれないけど。 (2000.2.1) |
● アニソンにサウンドの流行を取り入れた最初の作品 「鉄腕アトム」で構築された「ヒーロー物=マーチ風」という概念は根強く、昭和40年代初頭までは、ヒーロー物の大半を"マーチ風サウンド"が占めたが、一方では「狼少年ケン」など新ジャンルへの挑戦も、徐々にではあるが萌芽した。 音作りに関しては「スーパー〜」のほうが凝っている。 しかし、なんといっても、一番耳を引くのはエレキギターだろう。 この作品、セリフの挿入を除けば、歌詞はごく普通のヒーロー物だが、ことサウンド面に関しては非常に興味深い作りをしている。 この作品以降、アニメソングには大きな2つの系譜が生まれた。 (2000.2.1) |
● ウェスタン調による「ヒーロー物主題歌」の完成 「スーパー・ジェッター」で取り入れられた"ウェスタン・サウンド"は、「サイボーグ009」や忍者物の「サスケ」などで、下敷きとして流用されたが、大っぴらに全面採用された作品はこれが最初だろうか。 歌詞はヒーロー物の類型で、♪ルール無用の悪党に 正義のパンチをぶちかませ〜 ♪やつらのきばを折ってやれ〜 この作品で、ウェスタン調のヒーロー物主題歌という、新しいジャンルが完成した。 余談だが、歌っている新田洋について。 (2000.2.1) |
● コンセプトをまるごと流行から頂いた初のアニソン 楽曲制作において、サウンド面でトレンドを導入するという手法は、「スーパー・ジェッター」から始まったと思うが、「スーパー〜」が流行(エレキ)を部分的に取り入れていたのに対し、この「ファイトだ !! ピュー太」 は、コンセプトまるごと当時のトレンドからいただいてるのだ。 パクリと言うよりはパロディに近いが、こうした楽曲制作は今作が元祖では? で、今回はグループサウンズなのだが、ホントにそのまんま。 歌詞もアニソンなのに、GSテイストに溢れている。 ただし、こうした歌詞作りをしているおかげで、詞だけ読んでも、この「ファイトだ !!
ピュー太」がどういう内容のアニメなのか、さっぱり判らないのだ。 (2000.2.1) |
● アニソンで歌謡曲調のサウンドを試みた初の作品 サウンドのトレンドを全面的に導入するという手法は、「ファイトだ !! ピュー太」から始まったわけだが、この「紅三四郎」は、まるごとトレンドを導入というよりは、むしろ巷でヒットしている歌謡曲をアニソン流に消化したような感じ。 具体的に言えば、今回は黛ジュン・いしだあゆみといった「一人GS」。 歌詞は「ファイト〜」とは異なり、オーソドックスなアニソンの定型だ。 この作品以降、流行している歌謡曲を取り入れるパターンは多数産まれる。 それはそうと、この作品は「アニソンの女王」こと、堀江美都子のデビュー曲だ。 (2000.2.1) |
● ようやく「少女アニメ主題歌」の定型が確立 少女アニメのTV第1号作品は「魔法使いサリー」だが、主題歌は「狼少年ケン」からの系譜である「ジャングル・サウンド」で、この「サリー」サウンドを受け継ぐ少女アニメ主題歌は、以降見当たらず、定型には成り得なかった。 曲はメジャー調のスローテンポで、リズムはワルツ(メヌエット?)。 歌詞はメルヘンチックながらも、意外とコミカルで、その点は赤塚不二夫作品らしいかも。 この作品を歌う岡田恭子、彼女は当時女子高生で、渡辺プロ所属のアイドル候補生だったが、数曲吹き込んだだけで、芸能界からは足を洗ったらしい。 この作品で完成された、少女アニメ主題歌の定型要素は3つ。 (1)メルヘンチックな歌詞 以降、これらの要素を踏襲した作品は、「さるとびエッちゃん」「ミラクル少女リミットちゃん」など数多く、80年代の「魔法少女ララベル」に至るまでその影響が見られる。 (2000.2.1) |
● 後のアニメ界を席巻する、ジャズファンク路線の始祖 厳密にはコレより以前に、「ワンダー3」とかジャズっぽい作品はあったし、「黄金バット」もちょっとだけジャズ入ってるかもしれない。 曲はマイナー調のアップテンポで、リズムはモロにジャズ。 歌詞も、ヒーロー物と異形物をミックスさせたような作りをしている。 この作品で完成されたモダンジャズ路線(?)だが、「妖怪人間〜」のサウンドをそのまま継承した作品というのは、おそらく「山ねずみロッキーチャック」くらいで、あとは全然見当たらない。 (2000.2.1) |
● アニソン界の一大ジャンル、ジャズファンク路線の第1号 「妖怪人間ベム」で完成されたモダンジャズ路線(?)に、ラテン調のファンキーさを加味して再現したのが、この「みなしごハッチ」である。 ジャンル的には、"ジャズファンク"でしょうか? このアニメは、少年物とも少女物ともつかない動物アニメで、しかも"昆虫物"。 歌うのは嶋崎由理で、彼女は後に『Gメン'75』の挿入歌である、「面影」をヒットさせたことでも有名(こちらは"しまざき由理"名義だが)。 この手のジャズファンク・サウンドは、少年物・少女物を問わず、どちらにもマッチするようで、両ジャンルで多作された。 (2000.2.1) |
● アニソン概念を打ち破り、商業ポップスに近づいた第1号
70年代以降、アニメ主題歌はサウンド面で、3つの大きな柱を軸に生成発展していった。 一方、歌詞の面では特に大きな流れは見当たらず、「簡潔にして意味明瞭」「本編の内容を判り易く直喩」といった、ごく基本的な要点だけ押さえていればOK!という感じだ。 曲はメジャー調主体だが、所々マイナー調加味で、頭サビで始まるキャッチーな作り。 そもそも、アニソンのこうした動きは、松本零士アニメに代表される、70年代後半のアニメブームから始まった流れだとは思う。 それとは別に、TVアニメの本編そのものも、大きく変革したという点も見逃せない。 これ以降、アニソン界には"商業ポップス然"とした楽曲が飛躍的に増えて行く。 (2000.2.1) |
● アニソン初のメジャーヒット作品 『うる星やつら』以降、アニソンの(作風面での)商業ポップス化は、生成発展の一途をたどったわけだが、その結果、完全に商業ポップスとシンクロしてメジャーヒットしてしまった作品が、この「CAT'S
EYE」である。 曲はマイナー調で、アレンジは打ちこみ系のディスコサウンド。 実際、歌詞もお手軽そのもの。 しかし、この作品が大ヒットした一番の勝因は、杏里を起用したことだと思う。 この作品と『みゆき』のエンディングテーマ、「想い出がいっぱい」がメジャーヒットしたおかげで、アニソンの楽曲制作にも大変革が起きた。 (2000.2.1) |