■ アイドル的可愛さと歌唱力を併せ持つ、唯一無二の存在 唐突だけど、世間一般が抱く河合奈保子のイメージとはどのようなものだろう? かようにアイドル歌手としての資質に恵まれた彼女だったが、聖子・明菜クラスの大スターにはなり得なかった。 まぁこの「アーティスト路線」も大した成果を挙げることなく終わり(自作自演にこだわったのもイタい)、いつしかミュージカルや時代劇といった女優業に進出し、ジャッキー・チェンとの交際が話題を振り撒いたりしていたが、1996年にめでたく結婚。 (1999.12.17) |
■ メルヘンを装いつつ、女性性を暗喩する怪作 河合奈保子のデビュー曲。 しかしなんといっても、この歌は三浦徳子のキワドイ歌詞が最大特徴だろう。 まぁそれはともかく、もっと具体性を持って歌詞を勘繰れば、麻丘めぐみ路線に近い。 しかし、これほどの怪作であるにもかかわらず、世間ではそれほどキワモノ扱いされなかったのは、彼女の「真面目さ」「素直さ」といった善人キャラが余りにも鉄壁だったが故か? (1999.12.17) |
■ 曲作りは80年代アイドル歌謡の原型 前作「大きな森の小さなお家」では、彼女の「顔は童顔で愛らしいが体は肉感的」という大場久美子なビジュアル面にこだわり、麻丘めぐみ的なロリータ手法で作品制作を試みて、見事失敗に終わった。 まずは曲だが、前半は彼女の「生真面目さ」「ひたむきさ」を表現すべく、マイナー調の低音域でシリアスなメロディだ。 歌詞は意外と個性に欠ける、凡庸なラブソングだ。 こうした彼女のキャラクター重視で作品づくり(主にサウンド面で)をした結果、功を奏して18万枚の初ヒットに。 (1999.12.17) |
■ 明らかに山口百恵を意識した「港町歌謡」 これまでのメジャー志向とは打って変わって、今回はドメスティックなマイナー調サウンド。 で、歌詞だが、黄昏時の「ミナト横浜」を舞台に、「愛する男にどこまでも付いて行きます」といった、女の一途さを主題にしている。 アレンジも「ミナト横浜」の雰囲気を醸し出すべく、いろいろと工夫している。 とまぁかように、「港町歌謡」としては合格点が付けられる、水準作品ではあるけれど、百恵的な世界観は奈保子自身にはあまりマッチせず、正直言って成功とは言い難い作品だ。 (1999.12.17) |
■ 南沙織と似ているのは、タイトルよりも歌唱法 なんといっても、この南沙織と同名異曲なタイトルが興味を引く。 まずは歌詞だが、南盤がタイトルとは無関係な内容だったのに対し、奈保子盤はとことん「17才」という年齢にこだわった内容であるのが特徴。 で、曲だが、マイナー調からメジャーに無理やり転調するくだりは、さすがに同じスタッフだけのことはあって、「ヤング・ボーイ」と共通している。 しかし、一番注目したいのは歌唱面。 なんか、シンシア盤「17才」とは全然違うものを作ろうとして、その結果、同じシンシアの「傷つく世代」や「夏の感情」に近づいてしまったのは皮肉というか。 (1999.12.17) |
■ 河合奈保子の個性が全面開花した、初期の代表作 前作「17才」での、スピーディーなサウンドに乗せたグルーブ歌唱(?)に気をよくしたのか、今回はメジャー調で同傾向の作品にトライ。 アレンジは初めて大村雅朗が起用された。 歌詞は相変わらずの「あなたしか見えない」といった「ひたむき路線」だ。 こうして、歌詞・曲・アレンジの三位一体な統一感で、見事な傑作に仕上がった。 (1999.12.17) |
■ サウンドがタイトルに全然マッチしていない失敗作 前作「スマイル・フォー・ミー」の大成功を受けて、今回も作曲は馬飼野康二。 まず曲だが、前作を踏襲したメジャー調で、のっけから陽気でハッピーなメロディラインだ。 アレンジも曲作りに追従しており、メジャー部分では思いっきりポップに仕立てている。 こうした、コンセプト無視のサウンド作りのツケ(というか皺寄せ)が、一気に作詞に回って来た感じだ。 とまぁ、かようにコンセプトから逸脱した楽曲であり、明らかにコレは失敗作だ。 (1999.12.17) |
■ 80年代アイドルの中では最優秀歌唱賞レベル これは傑作だと思う。 曲作りも、そうした彼女のグルーブ感を引き立たせる作りをしている。 アレンジも全編に渡ってアップテンポ。 歌詞は彼女には珍しく「片想い」をテーマにしている。 かように、この作品は彼女特有のグルーブ歌唱を目いっぱい引き出すことに成功した傑作である。 余談だが、前作「ムーンライト・キッス」の頃、彼女はNHKでの収録中、高所から落下して大怪我を負った。 (1999.12.17) |
■ 「奈保子サウンド」の調和を乱す奇妙な歌詞 前作「ラブレター」では片想いがテーマだったが、今回は一歩進んで「失恋をも乗り越える執念(?)」がテーマ。 今回は、80年代を代表する"謎作家"のひとりである、松宮恭子が作詞・作曲を担当。 それはともかく、まずは曲。 対して歌詞は結構特徴的・・・というか変な歌詞だ。 この作品、サウンド面に関してはお馴染みのパターンで予定調和的だが、歌詞だけがこの調和を引っかき回しているかのようだ。 (1999.12.17) |
■ 河合奈保子の最高傑作 アップテンポのメジャー調サウンドに乗せて、恋の喜びを表現するというコンセプトは、1年前の「スマイル・フォー・ミー」と共通している。 曲は「スマイル〜」同様のメジャー調。 アレンジもこうしたメロディの細かさを、サンバのリズムに乗せることで、見事な高揚感を醸し出すことに成功した。 歌詞もおそらく最初にタイトルが決まっていたのだろうが、サビで見事にタイトルを嵌めている。 奈保子の歌唱もノリノリで、リズム感に富んでいながら音程正しく、発音も丁寧なのはスゴイ! まぁアラを探せばいろいろと欠点は出てくるが、そうした瑣末な問題点なぞ一聴する分には不問にしてしまう、見事なサンバ歌謡に仕上がった。 (1999.12.17) |
■ 曲・歌詞の完成度に対し、安っぽいアレンジが泣き所 「脱アイドル」を模索してリリースされた第1弾シングル。 まずは曲だが、60年代アメリカン・オールディーズを彷彿とさせる、まりや得意のメジャー調・3連ビートもの。 歌詞は「2人の男を同時に好きになってしまう」という、女の子の身勝手さをコケティッシュに表現している。 とまぁかように竹内まりやの曲・歌詞は見事なのだが、肝心のアレンジが安っぽくって、この作品は損をしている。 一方、奈保子の歌唱は相変わらず冴えている。 アレンジだけが陳腐で失敗したが、それでも優れた作品世界・歌唱力は共に高く評価された。 (1999.12.17) |
■ 「SWEET MEMORIES」にも通じる、フェミニン路線の佳作 前作「けんかをやめて」の成功を受けて、今回も竹内まりや作品で続投。 曲は「けんかを〜」同様、スローなメジャー調だが、3連ビートではなく、至ってオーソドックスな作り。 歌詞は「初めて彼氏の部屋に招かれて、嬉しさと緊張が交錯する、少女の微妙な心理」がテーマ。 とまぁ「けんかを〜」に比べると、インパクトに欠ける歌詞・曲ではあるが、今回はアレンジが冴えているのだ。 こうしたアレンジ面の頑張りで、作品が有する上品でフェミニンなムードは十二分に引き出されて、全体の完成度は「けんかを〜」を上回る出来映えとなった。 (1999.12.17) |
■ 不明瞭なタイトルとリリース時期で損をした作品 今回は作家陣が竹内まりやから来生えつこ・たかお姉弟へとバトンタッチ。 歌詞は前作同様、カップルの恋愛模様を題材にしているが、インドアだった前作の舞台とは打って変わって、今回は海を舞台にしたアウトドア。 大まかなアレンジは、ドラマティクなストリングス・ハープ・ギターのイントロ → 淡々としたピアノが印象的な歌い出し → 進行するにつれてコーラスが被さり → 次第にストリングスがフィーチャー といった構成で、すごく若草らしいサウンド作り。 (2004.03.09) |
竹内まりや・来生たかおと、ニューミュージック系アーティストによる楽曲提供が続いてきたが、今回は筒美京平&売野雅勇というバリバリの歌謡曲職人が起用された。 歌詞は前作に引き続き、渚を舞台にした男女の恋愛模様がテーマであるが、今回は煮え切らないシャイな男に対して自ら迫るという内容。 サウンドはエイミー・スチュワート「ノック・オン・ウッド」風のアレンジに、何か別の曲を乗せたような按配。 (2004.03.10) |
前作の大ヒットを受けて、今回も全く同じ作家陣で続投。 歌詞は「抑えきれない恋愛感情に身悶えてバランスを失う女心」がテーマで、主人公はあの手この手で挑発しながら、想いのたけを相手にぶつける。 この作品、サウンド面でのパクリが気になるが、曲・アレンジどちらも作品世界やヴォーカル特性に追従していて、決して無意味な盗用に終わっていないのはサスガ。 (2004.03.13) |
■ 曲が弱くて詞は難解、タイトルと内容も微妙にズレてる失敗作 「エスカレーション」以降、新境地にトライし続け音楽性を拡げてきた奈保子であるが、ここでは久々に「Invitation」などに通じる、ソフトタッチのニューミュージック路線へと回帰した。 歌詞は「彼氏と一緒に夜を迎えるその嬉しさ」を表しているように思える。 曲はミディアムテンポのメジャー調で、春めいた印象が3月発売という季節にはピッタリ。 この作品、アレンジの頑張りによって、どうにか聴ける代物には仕上がっているが、ヒットを狙うには曲が弱いし、歌詞も難解で意味不明という、明らかに失敗作であろう。 (2004.03.21) |
■ 八神純子の健闘空しい、「UNバランス」の縮小再生版 前作ではソフトタッチのニューミュージック路線へと回帰したが、今回は「エスカレーション」「UNバランス」に通じるマイナー調の挑発路線へと、これまた回帰している。 奈保子の歌唱は、曲がヴォーカル特性にフィットしているだけあって、当然冴えている。 この作品、歌詞もさることながら、マイナー調のメロディにデジタルチックなサウンドと、「UNバランス」との共通項が多い。 (2004.03.26) |
■ どう評価するかで、聞き手の「奈保子観」が問われるリトマス試験紙 前作に引き続き、今回も挑発路線で連投。 曲は全編マイナー調で、大まかな構成は「A→A'→B→C」。 売野の歌詞は、その挑発ぶりが一層エスカレートしている。 奈保子の歌唱は、難易度の高いメロディなだけに、若干音程は乱れ気味。 「UNバランス」のいびつなダウンサイジングだった前作に対し、今作は曲・アレンジ・歌詞・歌唱、いずれも過不足無い合格ラインで、路線を継承しながら適度に新味もあるという、会心の出来栄え。 かように優れた作品ではあるが、個人的には素直に評価できない部分もある。 とまぁ、いろいろ思うところあって、素直に評価できないわけだが、上述のマイナス面って、あくまでも僕個人の嗜好に過ぎない話で、善悪の問題ではない。 (2004.04.02) |