** France Gall **

1947年10月9日、パリ生まれ。
両親が音楽家という環境で育ち、ギャル自身、ごく自然に音楽に慣れ親しむようになる。
父親の提案で作成したデモ・テープが業界に認められ、1963年11月に歌手デビューを果たす。
デビュー曲「Ne sois pas si bete」がいきなりヒットし、その後も順調にヒット連発。
瞬く間にシルヴィ・バルタン、シェイラ、フランソワーズ・アルディと肩を並べる人気を博し、60年代を代表するアイドル歌手に成長。
しかし、クロード・フランソワやジュリアン・クレールとの恋愛、イエイエ・ブームの低迷などが重なり、70年頃からは人気低迷。
歌手としては不遇の時を過ごし、すっかり過去の人になりかけていた70年代中盤、シンガーソングライターのミシェル・ベルジェとコンビを組んで楽曲制作を始めてからは、見事に人気復活。
以降、80年代後半にかけてまで、再びヒットを連発して、結果的に60年代以上の実績を残した。
アイドルあがりのイメージを払拭し、完全に大人のシンガーとして定着。
ちなみに、76年にギャルとベルジェは結婚している。
公私ともに充実した生活を送る彼女だったが、なんと92年に夫・ベルジェが心臓発作で急逝。
近年はギャル自身までが乳癌に侵されるという悲劇に見舞われる。
97年より歌手活動は無期休業状態に入り、実質的に引退とみられる・・・
以上、フランス・ギャルのプロフィールを簡単に紹介してみた。 簡単すぎるか? でも、大体こんな感じ。

もうちょっと突っ込んで解説。
彼女がアイドルとして人気を博した60年代のフランスは、これまで自国のシャンソンが主流だった音楽業界に、英米のロック・ポップスが大量に流れ込み、それらが当時の若者に絶大なる支持を得る。
こうした英米音楽人気に触発されて、フランス音楽界でもそれらをカバーしたり、それらを模倣したりと、フランス独自のロック・ポップスが多作される。
そしてそれらがヒットチャートの上位を独占するという、いわゆる「イエ・イエ」の時代だった。
同時期、日本でも同じような現象が起こり、ザ・ピーナッツ、坂本九、弘田三枝子等が英米の音楽をカバー・模倣した、いわゆる"ティーン・ポップ"が全盛を極めた。 世界的規模でそうした気運が高まった時代だったのだろう。

先に述べたように、当時の代表的「イエ・イエ」女性アイドルは、シルヴィ・バルタン、シェイラ、フランソワーズ・アルディ、そしてギャルの4人。 彼女たちを"アイドル四天王"と呼んでもイイかも知れない。
まぁ普通フレンチ・ポップスで、アイドルという言い方はあまりしないか。 ロリータですね。
4人ともそれぞれに強烈な個性を有しており、その中でギャルは"ブリッ子"担当という趣きだ。
ブロンドの髪で愛らしい容姿、キュートな楽曲群、ヘタウマな歌唱は、まさしくアイドル歌手の典型。
ダニエル・ヴィダルの始祖といえるか?
でも、本国では誰もヴィダルの事なぞ知らないという、クレモンティーヌ状態らしいが。
それはともかく、ギャルは楽曲に大変恵まれており、ポップスのみならず、ジャズ・ロック・カントリーなどなど、実に様々なタイプの作品を歌いこなしている。 「イエ・イエ」歌手にしては、カバー盤が少なく、オリジナル作品が多いのも特徴。 あのセルジュ・ゲンズブールが手掛けた作品も多数有るし。
アイドル歌手の枠には収まらない、クウォリティの高さだ。

こうした彼女の特徴を総括し、それを日本のアイドルに当て嵌めてみると、松田聖子が近いかも。
恵まれたスタッフ陣による高品質な楽曲群、ブリッ子的な愛らしさ、ハスキーで色香ある声質など共通項は多い。
ギャルを聖子に例えるようなマネをすると、ロリータ好事家から「一緒にするな!」とクレームが来そうだけど、まぁギャルを知らない人に彼女の魅力を判り易く伝えるための、あくまでも方便ですので、ひとつご了承下さい。
と、こんな事言うと、今度は逆に聖子ファンから「何様のつもり?」と非難を受けそうだが。
とにかく、60年代の音源に抵抗が無く、なおかつアイドル歌謡も許容範囲な人なら、ギャルの60年代CDは絶対"買い"だと思います。 たとえ洋楽に興味が無くともOKでしょう。 いや、「アンチ洋楽」な人にこそ、是非聞いてもらいたいです。 音楽性自体は、松田聖子じゃなくって、初期の桜田淳子あたりに近いけど。

(2000.01.09)

 


* Ne sois pas si bete  *

J.Wolf / P.Delanoe

邦題「恋のお返し」。 フランス・ギャルのデビュー曲。
彼女には珍しいカバー盤で、元歌はジャック・ウォルフ「Stand a little closer」だそうだ。
私はこの元歌を全く聴いた事が無いのだが、たぶん英米でもヒットはしていないと思う。

歌詞は非常にユニークで、「最初は彼氏がデートの主導権を握っていたが、次第に彼氏のヘタレぶりに気がついて、結局は主人公がデートを仕切る」という"カカア天下"な内容。
ダメ男に対する不満をテーマにした作品は、日本でも山口百恵「ロックンロール・ウィドウ」や久宝留理子「男」など多数あるけど、こんな36年も前に、この手の主題が存在していたとは。
さすがはフランス、女性上位なフェミニズム志向の顕れ?
それとも単に、男女関係は古今東西、大した違いは無いということか?
それはともかく、物語の展開に伴って、サウンドも次第に盛り上がって行く作りをしている。
だんだんコーラスに厚みが出てくるし、キーもUPしていく。
♪lalalala woo yeah !〜 と、勇ましく締めくくるエンディングも、「女の子の強さ」を強調しているようで面白い。

具体的に曲はメジャー調で、リズムはブギウギ(?)。 荒井由実「ルージュの伝言」に近いような気が。
しかし今作では、ヴォーカルの二重録音処理や、凝ったコーラスワークなどを施し、歌唱をフィーチャーした音作りをしている。
まぁコレに限らず、一般的に60年代前半の楽曲制作は、ヴォーカルを重視したサウンド作りが基本ではあるけど。
おかげで、キャンディーズのような"アイドルグループ"っぽい作品に仕上がった。
途中リズムがブレイクし、ヴォーカルがウィスパー調になるくだりも、キャンディーズ「ハート泥棒」的だし。
さらに、ユーモラスなブラスが加わって、さほどメロディアスで無い割りには、聴いていて結構楽しい作品だ。

歌詞・サウンド、どちらもユニークで、双方の個性が見事に一致した傑作。
デビュー曲にして、いきなりのトップ10ヒットを記録。

フランス国内ヒットチャートの最高位 : 1964年2月 / 8位

(2000.01.09)

1964年2月 フランスTOP10

1 Excuse-moi partenaire / Johnny Hallyday
2 I Want To Hold Your Hand / The Beatles
3 A present tu peux T'en aller / Richard Anthony
4 La mamma / Charles Aznavour
5 Rien que toi / Dick Rivers
6 Si je chante / Sylvie Vartan
7 She Loves You / The Beatles
8 Ne sois pas si bete / France Gall
9 Meme si je suis fou / Monty
10 Quand je l'ai vie devant moi / Johnny Hallyday

出典:「HIT PARADES 1950-1998

 

* N'ecoute pas les idoles *

S.Gainsbourg

邦題「アイドルばかり聞かないで」。 セルジュ・ゲンズブール作品。
たぶん、ゲンズブールが初めてアイドルに提供した作品だと思う。
サウンドはマイナー調で、ニール・セダカ「恋の片道切符」を想わせるリズム。
ドラムス・ベースライン・チェンバロ(?)が三位一体で、このリズムを淡々と刻む。
メロディはキャッチーで覚え易いけど、ハッキリ言ってしまえば、まぁ取りたてて特徴の無い、スタンダードな楽曲でしょうか。 前作同様、終盤へ向かうに従いキーを高くして、次第に盛り上げて行く構成にしている。
サビを二重ヴォーカルにしている点も、前作を踏襲しているが、今回はユニゾン形式というシンプルな仕上がり。
まぁこの作品に限らず、ゲンズブールは楽曲制作の際、あまりコーラスワークには力を入れないのだけど。
悪く言えば単調なサウンドだが、作品全体が僅か1分台という短さなので、聴いていて飽きが来る前に"腹八分"状態で終わってくれるのがミソ。

しかし、歌詞はなかなか面白い。
彼氏に対して、「くだらないアイドルの歌ばかりに夢中になってないで、少しは私の事も考えてよ!」と諭し、
「でないと、アンタの家に行って、アイドルのレコードを全部ぶっ壊してやるからね!」と脅しをかけて、
「そうすれば、アンタは私の事だけ考えてくれるでしょ」と、最後は可愛くオトして決める。
ギャル自身がアイドルでありながら、アイドル歌手について言及するという内容は、小泉今日子「なんてったってアイドル」を想わせる。 しかし、小泉盤がアイドル稼業を全面肯定しているのに対し、こちらは自虐的。
その違いに、エスプリを尊ぶフランス人の国民性が滲み出ているような。(ホントか)

1985年に日本で「なんてったって〜」がリリースされた時は、やれ"画期的"だの、"業界のタブーに挑戦"だのいろいろ物議を醸したというのに、それから遡ること約20年も前に、フランスでは既にこのような作品が存在していたのだ。
やはり、フランスは文化先進国かも。
というか、それは単にゲンズブール個人のセンスの良さに起因しているのかも知れないが。
でも、かなりのヒットになったのだから、これを受け入れたフランス人の芸能に対する意識の高さは認めざるを得ない。

最高位 : 1964年5月 / 5位

(2000.01.09)

1964年5月 フランスTOP10

1 Amsterdam / Jacques Brel
2 A toi de choisir/ Richard Anthony
3 La plus belle pour aller danser / Sylvie Vartan
4 Allo Mailot 38.37 / Frank Alamo
5 N'ecoute pas les idoles / France Gall
6 Repose Beethoven / Eddy Mitchell
7 Ce n'est pas vrai / Monty
8 Hello Dolly / Petula Clark
9  Can't Buy Me Love / The Beatles
10 My Boy Lollipop / Millie

 

* Les rubanset et la fleur *

R.Gall / A.Popp

邦題「リボンと花」。 作詞はギャルの父親ロベールが、作曲は「恋はみずいろ」で有名なアンドレ・ポップが担当。
歌詞は非常に難解で、彼氏が主人公に対し、自分のギターに飾ってある4枚のリボンと一輪の花にまつわる逸話を、ギターを弾きながら長々と語るのだが、リボンに関してはあれこれ言及するものの、結局花については何も語らず終い。 さんざん焦らした挙句、主人公に花を手渡して終わり。 なんだそりゃ。
しかし、色々と語るものの、このリボンもどういう代物なのか、正直よく判らないのだ。
灰色のリボンは、戦争に出兵する際に、身内からもらうものなのか?
でも、白いリボンは、いつか産まれる自分の子供が恋をした時のために取ってあるらしいし。
フランス特有の慣習に基づく内容なのだろうけど・・・・う〜ん、よく判らん。
ギターに花とリボンが飾ってあるという設定からして、既に謎だし。

サウンドはスローなソフトロック調だが、かなり独特。
日本人には思い付かないような曲作りをしていると思う。
メジャーとマイナーが絡み合ったコード進行なのだが、なぜか哀愁味は皆無。
しかも、「C#」の後に「C」が続いたりして、奇妙なコード進行であるうえに、ヘンテコなメロディラインだ。
その辺は完全に外人のセンスだろう。 少なくとも、日本の歌謡曲には見られない曲調だけど、決して悪い曲ではない。

アレンジもやはり独特で、全編に流れるギターのアルペジオに、気だるいギターのストローク、トライアングルの音色が重なり、まるでリスナーを眠気に誘うような感覚に陥れる。
ギャルの歌唱も脱力気味だし、サビでのソフトなバックコーラスも儚げ。
曲自体に哀愁味は無いのに、アンニュイなサウンド作りをしているのが面白い。

思わせぶりな歌詞に、倦怠的なサウンド・・・・相乗効果で醸し出す雰囲気は幻想的ですらある。
この作品、一度聴いたらクセになるような不思議な魅力に満ちている。
"ドラッグソング"と言えるかも。 トリップ出来るのは私だけ?

最高位 : 1964年5月 / 12位

(2000.01.09)

 

* Mes premieres vraies vacances *

M.Vidalin / J.Datin

邦題「はじめてのヴァカンス」
サウンドはベースラインを強調した、メジャー調の2ビート。
そこに陽気なブラスや指パッチン(?)のオカズが加わり、シンプルながらも結構楽しいサウンドだ。
しかも、所々リズムがブレイクし、ノリ易い曲作り。
メロディは親しみやすいけど、まぁよくある代物で、いかにもオールディーズ的な楽曲ではあるか。
ドラムスが少々ジャズっぽいあたり、さすがに凡庸には終わっていないけど。

歌詞はタイトル通り、「少女が初めて両親と離れて夏休みを迎える、その喜びと期待」がテーマ。
ヴァカンスに胸をときめかせるという主題は、日本のアイドル歌謡にもありがちだが、
「L.A.でヴァカンスを過ごしたい!」 「渚でボーイハントしたい! それもスケベじゃない男の子を」
「だけど、ハーレクィーン・ロマンスの真似事はイヤ!」
などなど、主人公の思い描く休暇プランは、極めてアクティブでビッグスケール。
たとえ少女が思い描く空想にしたって、今から36年前の作品だという事を考えると、コレは相当"翔んでる女"だろう。
当時のフランスで、こんな少女の空想がどれほど一般的だったのかは知らないが。
少なくとも、当時の日本人には難しい発想だと思う。

サウンドは全然違うけど、コンセプトとしては、コニー・フランシス「Vacation」を参考にしているのだろう。
当時のティーン(死語か)にも作品世界が高い支持を得たのか、フランスではロングランヒットを記録。

最高位 : 1964年6〜8月 / 15位

(2000.01.09)

 

* Laisse tomber les filles *

S.Gainsbourg

邦題「娘たちにかまわないで」。 セルジュ・ゲンズブール作品。
歌詞は意外と道徳的で、やや難解な内容。
大人が若者に対して"何か"を忠告しているのだが、誰が誰に何を忠告しているのかが匿名なので、詳しい事はよく判らない。 「娘たちにかまわないで!」 「自分のことは自分でケリを付けなきゃならないんだから」
といった類の説教が延々と繰り返されるだけ。
しかし、作者がゲンズブールなだけに、遠回しに"青い性"みたいなものを表現しているような気もするが。

曲はマイナー調のアップテンポで、とてもキャッチーな仕上がり。
構成は「A→B→A→B→C」で、Cメロがメジャー調になっている。
しかし、なんといってもこの作品は、独特なベースラインに基づくリズムセクションがインパクト大。
例えるとすれば、「ピンポンパン体操」と言おうか、「ハクション大魔王」と言おうか・・・・
いや、「ドリフのズンドコ節」が一番近いかも。 それにしても、この独特なリズム、元々の出所は何なんだろう?
私はブルース・ロックから派生したものだと睨んでいるが。(違うかも)
この独特なリズムに特徴あるブラス隊が絡み、妙に歌謡曲っぽい作品に仕上がった。
歌謡曲ファンにはこの曲がイチオシか。

実はこの歌にはプロモーション・ビデオが存在し、日本でも観る事が出来る。
正確にはプロモとは言わず、「scopitone」と呼ぶらしいが。 ちなみに、何なんだろう、この「scopitone」とは。
今で言う"レーザー・ジュークボックス"のようなモノなんだろうか?
それはさておき、このビデオはなんとカラー映像で、当時のギャルの愛らしさが堪能出来る貴重な資料である。
ビデオの中身は、プレーボーイが次々と女の子を口説き落とす様子を、ギャルがたしなめる、といった内容。
ということは、やはりこの歌詞、ゲンズブールが世間一般の少女に対して、『貞操を守り通すことの大切さ』でも啓蒙しているのだろうか? 主旨が把握できずに悩んでいるのは私だけか?

最高位 : 1964年10月 / 14位

(2000.01.09)

 

* Christiansen *

M.Vidalin / J.Datin

邦題「クリスチャンセン」。 そのまんまですね。
もちろん、クリスチャンセンとは人名で、彼は一人でヨーロッパを南北縦断旅行しているノルウェー人らしい。
ほとんど『電波少年』状態で無謀な長旅だが、クリスチャンセンは美しい顔とギターの腕前で、旅先ではなんとか食いつないでるらしい。(スゴイな)
主人公はこの美青年とひと夏の恋を経験し、実家のオスロへ戻っていった彼のことを、ヴァカンスの美しい想い出としていつまでも胸にしまっておく・・・・そんなロマンティックな内容。
おとぎ話にしては妙にキャラクター設定がリアルだが、このクリスチャンセンにはモデルがいるのか?
当時フランスでこんな男が話題になったとか。 知らないけど。

曲はミディアム・スローなメジャー調。 所々マイナー調が加味されていて、上品な仕上がりである。
サウンドはソフトロック調だが、「リボンと花」とは異なり、極めてオーソドックスである。
しかし、穏やかなストリングス、ボンゴ・トライアングルのパーカス、ソフトなブラスなどで織り成すサウンド作りは、オーソドックスながらも非常に洗練されており、さらにサビでは、ヴォーカル・コーラス・ギターの混成で静かに盛りあがる(なんだそりゃ)仕掛けを施し、これまでの作品中、最も凝ったアレンジになっている。
この辺りから、ギャルの作品にもサウンド面で厚みが出て来た。
というか、この頃から"イエイエ"音楽全体が成熟してきたのかも知れないが。

この作品、ゲンズブール作品のような斬新さ・派手さには欠けるが、地味ながらも完成度は結構高い。
ちなみに、この1964年、ギャルはデビュー1年目であるにもかかわらず、順調にヒット曲を連発し、フランスの芸能雑誌『Salut les copains』(日本での『平凡』『明星』にあたる)の歌手人気投票では、女性部門でいきなり2位にランクした。
しかしその後は、シルヴィ・バルタン、シェイラ、フランソワーズ・アルディに抑されてしまい、再びトップ3入りすることは無かった。

最高位 : 1964年10月 / 19位

(2000.01.09)

「Salut les copain」 1964年人気投票

左:男性歌手 右:女性歌手

1 Johnny Hallyday / Sylvie Vartan
2 Claude Francois / France Gall
3 Richard Anthony / Sheila
4 Eddy Mitchell / Francoise Hardy
5 Hugues Aufray / Petula Clark
6 Frank Alamo / Marie Laforet
7 Enrico Macias / Michele Torr
8 Dick Rivers / Jocelyne
9 Monty / Stella
10 Alain Barriere / Dalida

 

* Sacre Charlemagne *

R.Gall / G.Lifeman

邦題「シャルマーニュ大王」。 ロベール・ギャルが作詞。 これまでの作風とは異なり、今回は唱歌風。
歌詞の主題は、子供たちの学校や勉強に対する不満。
特異なテーマだが、ギャルパパが非常にユーモラスに綴っている。
「シャルマーニュ大王が学校制度を発明したおかげで、私たちは毎日勉強しなくちゃならない!」
「頭に来ちゃう! 大王は戦争や狩りだけに専念してればよかったのに!」
「そうすれば毎日がお休みだったのに!」
「過去分詞の活用、数学を解くレッスン、フランス語の書き取り・・・なんてすごい勉強量なの?」
「あぁ、ホントにしゃくにさわる! シャルマーニュ大王様」
う〜む、日本人には思いも付かない主題だ。 ちなみに、シャルマーニュ大王とは、フランク王国の創設者だそうだ。

曲は子供向け唱歌らしく、キャッチーで覚え易いシンプルなメジャー調。
アレンジも至ってシンプルで、チェンバロ(?)を基調にした音作りだが、必要最低限でかなりスカスカ。
でも、今回はギャルのヴォーカルと、児童合唱団のコーラスを全面に押し出しているので、このスカスカ具合も計算の内だろう。 アレンジが歌唱を邪魔していないのは正解。
実際、ギャルと合唱団との掛け合いは、輪唱と斉唱を巧みに使い分けているうえに、所々リズムをブレイクしたりと、なかなか趣向を凝らしており、聴いてて結構楽しめる。
児童合唱団の導入は、メリー・ホプキン「悲しき天使」や、カーペンターズ「シング」と共通しているが、「シャルマーニュ〜」の子供たちは前述2作とは異なり、合唱は素人レベル。
「ひばり児童合唱団」や「コロンビアゆりかご会」にも遠く及ばず、ハッキリ言ってヘタクソなのだが、そこが逆に"子供達の学校・勉強に対する不満"をリアルに表現することに一役買っている。
さらに、ギャルの歌唱も今回はイマイチ。
というのも、今作は一聴すると単純な唱歌だが、結構音程の移動が激しく、歌うには意外と難しい曲なのだ。
しかし、そのヘタさ加減も、むしろ作品世界にピッタリ嵌まっていて、今回彼女は得をしている。

この作品、ヒット曲にしては珍しい唱歌調で、フランス版『みんなのうた』的な趣きがある。
幼稚といえば幼稚なのだが、作品世界は画期的だし、サウンドも個性的で、異色ながらも傑作といえるだろう。
海外でも好評だったようで、なんと16カ国語に翻訳され、アフリカのフランス語圏各国でも学生の愛唱歌として親しまれたらしい。

最高位 : 1964年12月〜1965年1月 / 5位

(2000.01.09)

1964年12月 フランスTOP10

1 Downtown / Petula Clark
2 Toujours un coin qui me rappelle / Eddy Mitchell
3 Donna donna / Claude Francois
4 Le penitencier / Johnny Hallyday
5 Sacre Charlemagne / France Gall
6 Les cloches sonnaient / Claude Francois
7 L'homme en noir / Sylvie Vartan
8 It's All Over Now / The Rolling Stones
9 L'orange / Gilbert Becaud
10 Fauche / Eddy Mitchell

 

* Poupee de cire, poupee de son *

S.Gainsbourg

邦題「夢見るシャンソン人形」。 セルジュ・ゲンズブール作品。
1965年度ユーロヴィジョン・グランプリ(ヨーロッパの音楽祭)にギャルの出場が決まり、その出品作として企画された、フランス・ギャル気合の一作。 仰々しい目的にふさわしく、作品は会心の出来映えとなった。

曲はマイナー調のアップテンポで、非常にキャッチーだ。 "売れ線"と言っていい。
構成は『A→A'→B→A』となっており、Bメロがメジャー調加味で、かなり歌謡曲っぽい作りである。
音楽祭で目立とう精神の顕れか、アレンジは派手。
特に耳を引くのはリズムセクションで、今回、曲とは無関係にフラメンコ調なのだ。
かなり唐突だけど何故? 高揚感を出して音楽祭を盛り上げようという魂胆か?
とにかく全編に冴え渡る軽快なカスタネットの音色が、ラテン気分(?)を煽る煽る。
この快活なフラメンコのリズムに、ストリングス・エレキギター・ブラスの編成、さらにトライアングルのパーカスやフルートも加わり、非常に賑やかな仕上がりとなった。 コーラス等は一切無いが、無くっても充分。
哀愁漂うメロディなのに、アレンジのおかげで不思議と陽気な楽曲に仕上がった。
サウンド面は凄く充実している。

歌詞は難解。 でも、深い内容だ。
原題は確か"蝋人形"だか"泥人形"の意味だったと思うが、主人公(おそらくギャル自身)は自分に、
「リアリティの無いラブソングばかり歌って、一体それが何なの?」と問いかけ、
「歌うことでしか愛や心を表現できないなんて、まるで人形じゃない?」とアイデンティティーを確認し、
「これじゃ男の事もロクに知らない、ただの蝋人形と同じ!」との解答を出す。
具体的にアイドルについての言及は無いが、テーマは"アイドルの人間宣言"?
同じゲンズブール作品の『アイドルばかり聞かないで』では、あからさまにアイドルを揶揄していたが、今回も同様の路線と考えていいかも。
今回このような主題を扱ったのは、ギャルが音楽祭でこうした内容を歌えば、その自虐性で一層注目が集まることを目論んでの計算だろう。

歌詞・サウンド、ともに趣向を凝らした結果、見事音楽祭ではグランプリを受賞した。
もちろん、この受賞の影には、政治的配慮・各種力関係の調整など、音楽祭のは付き物の様々な裏事情はあっただろうけど。
おかげで彼女も全ヨーロッパ的なスターになり、「夢見る〜」はドイツ語盤やイタリア語盤まで制作されたそうだ。
この成功を受けて、作者のゲンズブールは職業作家として生きていく決心がついたらしい。

さらに日本でも「夢見る〜」は大ヒットし、ギャルによる日本語盤も制作された。
ようやく彼女も、シルヴィ・バルタンに並んで、日本でも人気フレンチ・アイドルとなった。
当時、弘田三枝子や中尾ミエが、「夢見る〜」のカバー盤をリリース。
70年代に入ってからも、南沙織や小林麻美がアルバムでカバーし、90年代には"BRIDGE"なるグループのカバー盤が、CMソングとして起用されたり、織田哲郎が「夢見る〜」のメロディを模倣して(たぶん)、Mi-keに「ブルーライト・ヨコスカ」を提供したりと、「夢見る〜」は日本の歌謡界にも多大な影響を与えたといえる。
ちなみに、1965年3月にイタリアで、彼女の「Io si',tu no」という曲が最高位9位を記録しているが、これがイタリア語盤「夢見る〜」なんでしょうか?

最高位 : 1965年5月 / 5位

(2000.01.09)

1965年5月 フランスTOP10

1 Va-t-en, va-t-en / Dick Rivers
2 Les choses de la maison / Claude Francois
3 La nuit / Adamo
4 The Game Of Love / Wayne Fontana & the Mindbenders
5 Poupee de cire, poupee de son / France Gall
6 Si tu n'etais pas mon frere / Eddy Mitchell
7 Ticket To Ride / The Beatles
8 The Last Time / The Rolling Stones
9 Cecile, ma fille / Claude Nougaro
10 Il te faudra chercher / Richard Anthony

 

* Attends ou va-t'en *

S.Gainsbourg

邦題「涙のシャンソン日記」。 またしてもゲンズブール作品。 それにしてもこの邦題は凄い。
「夢見るシャンソン人形」というのも結構キテるが、あれは多少原題と意味がダブってるから、まだ判る。
しかし、今回の原題は"行かないで"の意味なのに、いきなり「シャンソン日記」とは。
「夢見る〜」からの"シャンソン"繋がりではあるけれど、よく思い付くなぁ。 こんな「シャンソン日記」なる造語を。
しかも、この意味不明な造語に、"涙の"を冠することで、とりあえず邦題としての体裁は整っているのが見事。
まさしく職人芸。 ある意味、尊敬に値する。

歌詞の内容も「シャンソン日記」とは当然無縁で、恋を知った少女の揺れ動く感情を、またしてもゲンズブールが難解に描写している。
恋が芽生えたのか、終わったのかが、今一つ判然としないが、それ以上に複雑なのは、主人公が彼氏に対して、
「待っていて・・・いや、すぐに行って」 「ここにいて・・・いや、遠くに行って」
という、どっちつかずの無茶なおねだりに終始している点だ。
でも、考えて見たら、少女が彼氏に対して"どっちつかず"で理不尽な感情を抱くという描写は、アイドル歌謡の定型ではある。 松田聖子「小麦色のマーメイド」とか、モーニング娘。「サマーナイトタウン」とか。
「好きか嫌いか、ハッキリせい!」と言いたくなる、アレである。
そう考えると、この作品、この手の「理不尽アイドル歌謡(?)」の先駆といえるかも。
今から35年も前に、既に雛型が出来あがっていたとは。 やっぱり、フランスは"ロリータ先進国"だ。

曲はメロウなマイナー調で、歌い出しがニール・セダカ「恋の片道切符」と同じ。
「アイドルばかり聞かないで」は、リズムが「恋の〜」に似ていたが、何気にニール・セダカはゲンズブールに影響を与えていたのか? ニール・セダカはフランスでヒット曲は無いんだけどなぁ。
アレンジは「夢見る〜」に比べれば至ってシンプルだが、むせび泣くハーモニカの音色が、哀愁漂うメロディを引き立てるのに、大きな効果を発揮している。 リズムセクションはまたしてもユニーク。
今回はなんと蒸気機関車。 藤山一郎の「青い山脈」なんかと同じである。
機関車というのが、これまた「恋の片道切符」的だったりもするのだが。

それはともかく、ゲンズブールという人は、持ち前の優れた作曲・プロデュース能力で、フレンチ・ポップス黎明期をリードしてきたことは当然なのだが、それ以上に曲作りにおいて、様々なリズムを導入したことが、業界に対する一番の大きな貢献だったのではなかろうか?
ギャル作品でも、フラメンコ・ブルージー・機関車・ヒンズー音楽などいろいろあるし、ブリジッド・バルドー作品でも、バイク・チャールストンなど、ユニークなリズムを数多く取り入れてる。
こうして彼が雑種多様なリズムを取り入れた事で、フレンチ・ポップスはより音楽性に幅が出てきて、更なる発展を遂げたと思うのだが。 この作品、「夢見る〜」に続いて日本でもヒットを記録。
90年代には原田知世がカバーしたりと、「夢見る〜」に次ぐ、ギャルの日本での代表作である。

最高位 : 1965年7月〜8月 / 18位

(2000.01.09)

 

* Le temps de la rentree *

R.Gall /  P.Gall

邦題「新学期」。 作詞は"ギャルパパ"ロベールが、作曲はギャルの兄パトリックが担当。
ギャル一家で制作されたアットホームな作品で、日本で言えば、三木たかし・黛ジュン兄妹みたいなものか?
意外とフレンチ・ポップス界も、親子・兄弟姉妹・夫婦など、ファミリーで活動しているケースが目立つ。
シルヴィ・バルタンも、兄エディが手掛けた作品を多く歌っていたりするし。

それはともかく、歌詞はタイトル通り、「ヴァカンスが明けて新学期が始まれば、また彼氏と会うことが出来るから、今から学校へ行くのが楽しみ!」という、少女の胸ふくらむ期待が主題。
「シャルマーニュ大王」とは打って変わって、こちらは学校肯定型。
同じギャルパパ作品なのに、こうも違うとは。 いずれにしてもロベールは学校好きだ。

"ルンルン"な歌詞の内容にもかかわらず、曲はマイナー調。
そんなにメロディアスでは無いが、所々リズムを変化させていて、まぁノリ易い曲作りだ。
アレンジはバンド系の音作りで、ビートニック。 「イエイエ」も、ようやくこの辺りからビートルズの影響が出てきたか?
ドラムス・ベース・コーラス・タンバリンと、確かにバンドっぽいサウンドではあるが、今回メインがエレキギターでは無く、チェンバロというのが非常に面白い。
シンプルな楽器編成がガレージ・ロック的だけど、ガレージと呼ぶには音作りが洗練されていて、むしろ日本の歌謡曲に見られる"一人GS"に近いかも。 例えば、いしだあゆみ「太陽は泣いている」とか。 
あそこまで歌謡曲っぽいメロディではないが、チェンバロをフィーチャーしたサウンド作りとか共通している。

この作品、メロディがキャッチーでないうえに、詞の内容とサウンドが全然マッチしていない。
正直、成功作とは言い難いが、音作りに関しては興味深いものがある。
"一人GS"が好きな人には、この歌や、サイケ調の「シャンソン戦争」、よりビートを利かせたメロディアスな傑作「Made in France」なんかがお薦め。

最高位 : 1965年10月 / 30位

(2000.01.09)

「Salut les copain」 1965年人気投票

左:男性歌手 右:女性歌手

1 Johnny Hallyday / Sylvie Vartan
2 Adamo / Sheila
3 Claude Francois / Francoise Hardy
4 Hugues Aufray / France Gall
5 Frank Alamo / Michele Torr
6 Eddy Mitchell / Petula Clark
7 Richard Anthony / Marie Laforet
8 Ronnie Bird / Chantal Goya
9 Monty / Christine Lebail
10 Dick Rivers / Jocelyne

 

* Les sucettes *

S.Gainsbourg

邦題「アニーとボンボン」。 セルジュ・ゲンズブール作品。
メジャー調のスローな曲だが、要所要所でマイナー調が加味されていて、とても上品な仕上がり。
しかも、覚え易くてキャッチーと来ている。 名曲と言ってイイかも。
でもこの曲、構成といい曲調といい、どことなくヘレン・シャピロ「悲しき片想い」に似ているような・・・・

アレンジは「悲しき〜」とは違って、ソフトロック調。
多重構成なストリングスにギター・ベース・タンバリンなどが絡んで、上品なメロディを引き立てるべく、洗練された音作りを施している。 ギャルのヴォーカルも、可愛らしい"ささやき調"で、曲調に即した形だ。
曲を含めてサウンド面は、ギャルの作品中、トップクラスの完成度であろう。

しかし、何と言ってもこの作品は歌詞が最大特徴。
アニーという少女が大好きな飴棒を舐める、という内容なのだが、
 「アニーはニッキ入りの飴棒が大好きで、数ペニー払って買っている」
 「アニーの好きな飴棒は、自分の眼と同じ色で、それは幸せの色」
 「ニッキ入りの麦芽の飴がのどを流れると、アニーは天国に居る気分」
 「アニーは飴を舐め尽くすと、急いで薬局へ駈けつけて、また同じ飴棒を買う」
といった描写で、ハッキリ言ってこれは"口淫"を暗喩していることは確実。
相当にあざとい内容で、フランス版「大きな森の小さなお家」と言えるかも。

フレンチファンの間では、あまりにも有名な話だが、この歌詞の内容は、当時フランス国内で相当物議を醸したらしい。
しかも、この歌詞の真意を理解できないまま、ギャルが無邪気に歌っていたので、マスコミはこぞって彼女を"低能"呼ばわりして、なおさら激しくこの作品をバッシングしたのだとか。
後年、彼女が歌の真意を知って怒りまくった、という後日談も聞いた事がある。
彼女がムキになって怒る姿を見て、ゲンズブールが"青い!"と嘆いた、という噂も耳にした。
しかし、こうした逸話の一方、当時ギャルはこの歌の真意を全て把握したうえで、
「こんな歌が似合うほど、もう私は子供じゃない」とクールな発言をした、というエピソードも目にした事がある。
とにかくこの歌に関しては、いろんな情報・裏話が錯綜しており、フレンチ・ポップス界では、もはや伝説の域に達したと言えよう。

それにしても、ゲンズブールは秋元康っぽいなぁ。
こうしてロリータをプロデュースし、エロティックな歌を歌わせる一方、映画制作、文筆業など、あらゆるメディアで活動していたりして。
秋元も「おニャン子クラブ」をプロデュースし、彼女らにエロティックな歌を歌わせていたし(「アニー〜」ほどキワドイ作品は無いが)、TV番組や映画の制作に携わったり、小説を書いたりしているわけだし。
自身が手掛けたロリータを妻に娶った点も共通している。
こんな事を言うと、ゲンズブール信者は絶対怒ると思うが、客観的に冷静に考察すると、残念ながら両者には共通項が多いのだ。 というか、秋元が内心ゲンズブールを意識しているのかも知れないが。
「なんてったってアイドル」の作者でもあるし。 まぁ"残念ながら"という事はないか。
秋元康だって才能豊かな鬼才であるのは事実だし。

最高位 : 1966年5月 / 9位

(2000.01.09)

1966年5月 フランスTOP10

1 Bang bang / Sheila
2 Love me please love me / Michel Polnareff
3 Les jolies colonies de vacances / Pierre Perret
4 Cheveux longs, idees courtes / Johnny Hallyday
5 Excusez-moi, monsieur le professeur / Christophe
6 Ton nom / Adamo
7 Le deserteur / Les Sunlights
8 Paint It Black / The Rolling Stones
9 Les sucettes / France Gall
10 Juanita banana / Henri Salvador

 

* Bonsoir John John *

G.Thibaut / C.H.Vic

邦題「ボンソワール・ジョン・ジョン」
タイトルからも察しがつくように、この作品は先年物故した、あのジョン・F・ケネディ・ジュニア(通称ジョン・ジョン)を取り上げている。
父親暗殺後にフランスを訪れた、幼い"父なし子"ジョン・ジョンを励ます目的で、彼の来仏直後にこの作品が制作された。 なんとギャル本人が立案した企画らしい。

歌詞の描写は、非常に母性愛に溢れている。
 「パパは旅立ってしまったのだから、家長のジョン・ジョンはしっかりなさい」
 「ジョン・ジョン、あなたは男の子なんだから、決して泣いてはいけない」
 「悲しい人は大勢いるけど、誰も泣いていないでしょ?」
 「イイ子でいれば、夢の中にパパが出てきて、キスをしてって言ってくれるかも」
企画色が強いものの、結構感動的な内容ではある。
森山良子「愛する人に歌わせないで」を彷彿とさせる作品世界だ。

曲はスローなメジャー調で、メロディの構成は「A→A→B」となっているが、この曲、Bメロが全然良くない。
覚えにくいうえに単調で、大してキャッチーでもないのだ。
構成上はAメロがサビだから、Bメロが多少ダメでも別に構わないのだろうが、結構Bメロが長いので、これほどつまんないと問題アリだろう。 サビのAメロも悪くはないけど、特別キャッチーというわけでもないし。
アレンジはソフトロック調で、オルガンとベースをメインに、適宜ストリングス・ギター・ブラスなどが絡む構成。
ギャルのヴォーカルが"ささやき調"なのが、「アニーとボンボン」的だが、「アニー〜」に比べれば音作りは至ってシンプル。

この作品、シングルとしては今一つ物足りない楽曲だが、タイミングの良いリリースで作品世界が支持されたのか、トップ10入りするヒットを記録。 完全に企画の勝利か。 だとしたら、ギャルの企画力はかなりのモノだ。
余談だが、この作品をリリースする直前、ギャルは来日公演を果たしている。
公演は盛況だったようだが、実はこれにはカラクリがあって、彼女の来日公演を見た人には、後のビートルズ来日公演のチケットが優先的に入手できる、という特典があったのだ。
ビートルズ目当てで、仕方なくギャルの公演を見に来たという人が、結構いたらしい。
今では考えられないアコギな話だが、当時はこの手の"オラオラ"な興行システムが、大手を振って世間一般にまかり通っていたのか? だとしたら、まさしく「ザ・ 芸能界」「That's 興行」。
どんなにフレンチ・ポップスがオシャレで小粋であろうが、日本の泥臭い芸能・興行システムに足を踏み入れた途端、オシャレや小粋も手垢にまみれて、身もフタも無くなってしまう感じ。
フレンチ・ポップスの日本語盤なんて、そうした"身もフタも無さ"の典型だと思うが。
それはともかく、どんな裏事情があろうとも、当時のギャルを生で見れた人はラッキーだと思う。

最高位 : 1966年9月 / 9位

(2000.01.09)

1966年9月 フランスTOP10

1 Noir c'est noir / Johnny Hallyday
2 Yellow Submarine / The Beatles
3 Celine / Hugues Aufray
4 L'amour avec toi / Michel Polnareff
5 Les temps des pleurs / Claude Francois
6 Et moi, et moi, et moi / Jacques Dutronc
7 Eleanor Rigby / The Beatles
8 Ton nom / Adamo
9 Bonsoir John John / France Gall
10 La generation perdue / Johnny Hallyday

 

* Tu n'as pas le droit *

J.Weiner / J.Drejac

邦題「あなたに権利はない」。 アイドル歌謡にしては穏やかならぬ題名だ。
今回は「亭主関白気取りで自分勝手な彼氏の傲慢さに、愛想をつかした少女の反抗」がテーマ。
 「貴方は私を束縛して来たけど、もう我慢できない!」 「愛していたけど、今は貴方が憎い!」
 「今やっと気がついた。 これで私は自由の身」 「もう貴方のことなど眼中に無い、出ていって!」
男の立場からすれば相当にキツイ内容で、描写も過激だ。
今から33年前の作品であることを考えれば、タイトル同様、作品世界もかなりアイドル離れしているだろう。

曲はマイナー調で、構成は「A→A→B」という簡素な作りだが、Aメロが独特な変拍子になっているのが特徴。
しかも、Bメロでは普通の4ビートに変化し、この奇妙な構成が作品にアクセントを与えている。
リズム的には趣向を凝らしているが、メロディそのものは非常にシンプル。
いや、シンプルを通り越して"お手軽"、単刀直入に言ってしまえば"手抜き"といった感じだ。
覚え易いメロディこそアイドル歌謡の肝ではあるけど、いくらなんでもコレはちょっとヒドイだろう。
ギャルの作品中、最も"テキトー"な曲だ。

アレンジは、攻撃的な歌詞の内容を表現すべく、非常に勇ましい音作りを施している。
リズムは「アイドルばかり聞かないで」同様の2ビート。
今回はドラムスとタンバリンでリズムを刻むが、これに迫力あるブラス隊やピアノが絡む。
彼女には珍しい"力強さ"がこの作品の身上なのだが、ギャルの二重ヴォーカルをサウンドの要にしていて、せっかくの迫力あるアレンジが、今一つ生かされていないのだ。
曲がつまんないのだから、ヴォーカルよりも、バックのアレンジを全面に押し出したほうがイイと思うが。
ぜめてアレンジで曲のダメさ加減をカバーしないと(というか誤魔化し)、ねぇ。

この作品、主題は興味深いものの、余りに曲のレベルが低すぎて、成功とは言えないだろう。
イントロがちょっとだけ、オリジナル・キャスト「ミスター・マンデイ」に似ているような気が。

最高位 : 1967年1月 / 30位

(2000.01.09)

「Salut les copain」 1966年人気投票

左:男性歌手 右:女性歌手

1 Adamo / Sheila
2 Johnny Hallyday / Sylvie Vartan
3 Claude Francois / Francoise Hardy
4 Antoine / France Gall
5 Herve Vilard / Mireille Mathieu
6 Michel Polnareff / Annie Philippe
7 Hugues Aufray / Delizia Adamo
8 Frank Alamo / Stone
9 Eddy Mitchell / Michele Torr
10 Richard Anthony / Petula Clark

 

* Bebe requin *

J.M.Rivat-F.Thomas / J.Dassin

邦題「おしゃまな初恋」。 ちなみに、原題の意味は"鮫の赤ちゃん"。
人気シンガーソングライター、ジョー・ダッサンが作曲。 「おお、シャンゼリゼ」の作者として有名。
歌詞は少女の恋愛感情をメルヘンチックに表現しているのだろうが、非常に難解である。
 「さぁ、私に付いて来て。 真珠と珊瑚の国へご案内」
 「私は鮫の赤ちゃん。 あなたを暖かい水に案内してあげる」
 「そして気づかない内に、あなたのハートを食べちゃうの」
 「もし、喧嘩しても、あなたを守ってあげる。 ハートを一人占めしたいから」
 「鮫の赤ちゃん、それはビードロの赤ん坊、恋する赤ん坊」
・・・・・???? 何が言いたいのかさっぱりわからん。 曖昧にイメージは伝わってくるものの、具体性はゼロ。
う〜ん、これは一種の童話として解釈したほうが賢明かも。
「シャルマーニュ大王」が唱歌なら、こちらは童謡か。 よく判らん。

サウンドも作品世界に呼応すべく、なかなか個性的でユーモラスな仕上がり。
全体の骨組みは「マンチェスターとリバプール」をモチーフにしているか?
あの独特のリズムやテンポはそのまんまだし、曲がマイナー調で、アレンジがシンプルかつユニークな点も共通している。 曲の構成は「A→B→C→D」となっていて、Aメロがメジャー調。 どのパートも非常にキャッチーで覚え易い。
アレンジはシンプルながらも、各パート毎に趣向を凝らしていて、リスナーを退屈させない。
全編ベース・ギター・ドラムスが軸となっているが、Aメロではマリンバが加わり、Bメロではユーモラスなブラスが入る。
さらに、Cメロではタンバリンの後にオルガンが続き、ここでギャルのヴォーカルはハミングになる。
そして、Dメロ(一応サビか?)では、オルガン・ブラスに加え、非常に凝ったコーラスワークが重なり、一気に盛りあがる。

余りにも難解な歌詞は、イイのか悪いのか判断が付きかねるが、ことサウンドに関しては、文句の付けようが無いほど完成度が高い。
不可思議な作品世界も"メルヘン"として処理すれば、まぁ理解出来なくは無いし、この作品はかなりの傑作と言えるだろう。 彼女にとって久々の大ヒットを記録。 売れて当然だと思う。
余談だが、先に述べた「マンチェスターとリバプール」について。
英国のグループ"ピンキーとフェラス"(キラーズにあらず。このグループを話題にすると、必ず引き合いに出されるが。)の盤が日本で大ヒットしたおかげで、この作品をイギリス産だと思っている人が多いが、実はフレンチなのだ。
オリジナルはマリー・ラフォレで(たぶん)、本国では1966年にヒットしている。
ちなみに、作曲はアンドレ・ポップ。 「リボンと花」の作者だ。

最高位 : 1967年10月 / 4位

(2000.01.09)

1967年10月 フランスTOP10

1 San Francisco / Scott McKenzie
2 Marie Jeanne / Joe Dassin
3 All You Need Is Love / The Beatles
4 Bebe requin / France Gall
5 Mais quand le matin / Claude Francois
6 San Francisco / Johnny Hallyday
7 Adios amor / Sheila
8 Les gens du Nord / Enrico Macias
9 Le kid / Sylvie Vartan
10 We Love You / The Rolling Stones

 

* Chanson pour que tu m'aimes un peu *

R.Gall / P.Gall

邦題「あなたに愛してもらうために」
作詞はおなじみギャルパパが、作曲は"ギャル兄"パトリックが、それぞれ担当。
今回は「つれない彼氏の素振りにやきもきしてしまう、主人公の恋愛感情」がテーマ。
 「優しくして、とは言わないけど・・・・でも、もう少し愛して欲しい」
 「笑って、とも頼まないけど、せめて私がオシャレした時くらいは・・・・」
 「貴方は私を見ていない。 目の前にいるというのに」
 「いつになったら、私を愛してくれるのかしら?」
可愛らしくはあるが、割りとよくある主題で、描写もオーソドックス。

曲はマイナー調のミディアムテンポで、構成は「A→A→B」。
Aメロが低音域で、Bメロを高音にして一気に盛り上げるつくりだが、ハッキリ言ってつまんないメロディだ。
簡単で覚え易い旋律だが、キャッチーさには欠ける。アレンジはフォークロック調。
ドラムス・ベースのリズム隊を主軸にした音作りで、これにフォークギターやオルガンが絡む、至ってシンプルな編成。
曲・アレンジ、ともにサウンド面は凡庸極まりない。

この作品、歌詞が無個性でサウンドが凡庸という、特筆すべき点は何一つ無い駄作。
失敗作とも言いきれないだけに、なおさら興味が沸かない。 ホント、どうでもいい作品である。

最高位 : 1967年10月 / 28位

(2000.01.09)

 

* Toi que je veux *

J.M.Rivat-F.Thomas / J.Dassin

邦題「あなたが欲しい」
「おしゃまな初恋」の大ヒットにスタッフが気を良くしたのか、今回も同じ作家陣だ。
それだけにプレッシャーも大きかっただろうが、一定の水準には達しており、無事努めは果たしたか。

歌詞の内容は、「彼氏を愛しながらも、いつか来るかも知れない"別れ"に不安を抱く、揺れる乙女心」がテーマ。
おセンチな主題を、上品かつロマンティックに描いている。
 「私が求めるのは貴方。 貴方を幸せに出来るのは私」 「雨に濡れるバラのように、熱い人生へ向かう私」
 「でもファンファーレが叫ぶ。 二人の愛が終わるのだと」 「・・・・けど、そんな事で私の人生は変わらない!」
「おしゃまな〜」とは打って変わって、非常に判りやすいラブソングに仕上がった。

曲はメジャー調で、構成は「A→A'→B→B'→C→D」。
曲・アレンジともに、歌詞の展開に追従した作りをしている。
まず、彼氏への愛を独白する歌い出しでは、弦楽器多重奏のみというクラッシック調で、非常に格調高い仕上がり。
アレンジで、純粋な乙女心を上手く表現することに成功。
しかし、コレにすぐリズム隊が加わり、カントリー調のギターやリコーダーの音色が絡む。
Cメロが「ファンファーレが叫ぶ」という内容にあたるのだが、メロディも高音で盛りあがり、アレンジもココでは本当にラッパが鳴り響く。
主人公が将来に対して疑心暗鬼になるDメロ部分が、これまでの曲・アレンジとは無関係で結構唐突な作りなのだが、その意外な展開が、むしろ将来への不安を表現することに成功している。

この作品、地味ではあるが、曲・アレンジが、歌詞の作品世界とマッチするように計算されていて、なかなかの出来映えだと思う。 ただ、カントリーっぽいギターは余計だったと思うが。
おかげで、せっかくの格調高さが少々薄れてしまい、その点が残念である。

最高位 : 1967年12月 / 21位

(2000.01.09)

「Salut les copain」 1967年人気投票

左:男性歌手 右:女性歌手

1 Adamo / Sheila
2 Johnny Hallyday / Sylvie Vartan
3 Claude Francois / Francoise Hardy
4 Michel Polnareff / France Gall
5 Jacques Dutronc / Mireille Mathieu
6 Richard Anthony / Nicoletta
7 Hugues Aufray / Petula Clark
8 Antoine / Annie Philippe
9 Eddy Mitchell / Stone
10 Herve Vilard / Marie Laforet

 

* L'orage *

C.Conti-D.Pace / G.Argenio-M.Panzeri, J.M.Rivat-F.Thomas

日本未発表曲。 実はこの歌を聴いたことがないのだ。
しかし、ギャル60年代最後のヒット曲なので、今回取り上げないわけにはいかない。
幸いにして、この作品に関する資料が多少手元にあるので、せめて情報だけでも紹介したい。

この作品は、ジリオラ・チンクエッティ「La pioggia」(邦題:「雨」)のフランス語カバーなのだ。
ジリオラは当時のイタリアを代表する女性歌手で、日本でもヒット曲が多数ある。
「雨」も日本で大ヒットしており(オリコン6位)、今でもカンツォーネの代表曲として親しまれているので、ご存知の方も多いと思う。
1969年に彼女がサンレモ音楽祭に出場した際、エントリー曲がこの「雨」だったのだが、音楽祭ではギャルをパートナーにして歌ったのだとか。 おそらくギャル盤「雨」は、その絡みでのリリースだったと思われる。

このギャル盤「雨」は、イタリアでもヒットを記録しているが(最高位13位)、こちらはチャート上の表記が「La pioggia」なので、もしかしたらイタリア語の可能性アリ。
ちなみに、フランス題の「L'orage」とは、フランス語で"嵐"の意味なのだそう。
何故"雨"では無く、"嵐"なのかは不明。
なお、ギャルのフランス語盤「雨」は、一部の輸入コンピレーションCDに収録されている。
一方、ジリオラ盤もフランスでヒットし、最高位3位をマーク。
ただ、このジリオラ盤も、フランスのチャートでは「L'orage」表記なので、フランス語で歌っている可能性大。
もちろん、ジリオラのオリジナルは、本国イタリアでも大ヒットしている。(最高位2位)

とりあえず、錯綜する情報を書き連ねてみたが、判然としない不透明な部分が多い。
詳しい情報・真相をご存知の方がいらしたら、是非教えて下さい。

最高位 : 1969年6月 / 10位

※ちなみに、この「L'orage」のコラムは、『 Lolita メーリングリスト』会員の方が配信された情報を元に作成している事を、ここに明記致します。

(2000.01.09)

1969年6月 フランスTOP10

1 My Way / Frank Sinatra
2 Oh Lady Mary / David Alexandre Winter
3 Le sirop typoon / Richard Anthony
4 Get Back Don't Let Me Down / The Beatles
5 Ob-la-di, Ob-la-da / The Beatles
6 Daydream / Wallace Collection
7 I Started A Joke / Bee Gees
8 Etonnez-moi Benoit / Francoise Hardy
9 Les petit pains au chocolat / Joe Dassin
10 L'orage / France Gall


* Other Songs *

数多いギャルの作品群から、60年代に本国フランスでヒットしたものだけに限定して、今回は取り上げてみた。
それでも17曲あるのだから、かなりの数だが。
70年代以降も、彼女には傑作が多いらしいのだが、私は未聴の作品が多いので、今後勉強してから再び取り上げてみたいと思う。
上記で取り扱った作品以外にも、60年代モノには紹介したい傑作があるので、掻い摘んで下記に列記しておきます。


パンス・ア・モア

 16才のギャルがジャズに挑戦した作品で、俗に言う"キャンディ・ジャズ"の雛型ではなかろうか?
 だとしたら、音楽史的にも重要な作品だと言える。
 その後「ジャズ・ア・ゴーゴー」「ジャズる心」「テンポの時代」など、同系列の作品が多作された。

 「恋のお返し」同様、ジャック・ウォルシュのカバー。
 ユーモラスな傑作だが、実はこの作品にもプロモビデオがあるのだ。
 無邪気なギャルの姿が、カラーで堪能出来る内容で、一見の価値アリ。

アメリカ万歳

 彼女には珍しいカントリー調だが、なぜかリズムは"タムレ"のような南国風。
  フランス版"無国籍歌謡"の趣き。

天使のためいき

 日本ではヒットした作品で、かなり歌謡曲度数が高いゲンズブール作品。 ウェスタン調のアレンジがユニーク。

女の子になるのも楽じゃない

 ロリータの本音を綴った歌詞が面白いが、これこそ歌謡曲っぽいメロディだ。
 ザ・タイガース「銀河のロマンス」に似ているが、タイガースの元ネタはビージーズではなく、フレンチ?

ブーム・ブーム

 曲はミディアム・スローなポップスだが、アレンジはジャジー。
  スウィング感が心地よい、大人のムード溢れる傑作。

ティニー・ウィニー・ボッピー

 ドラッグを扱った主題が結構キテるゲンズブール作品。
 サウンド的には、同時期のブリジッド・バルドー「ハーレー・ダビッドソン」と姉妹作?

青い目

 ジャジーでありながらも、エスニックといえるサウンドで、神秘的だが今聴いてもかなり斬新。

ハロー、天国のムッシュー

 クラシカルで清冽なサウンドも魅力的だが、それ以上に歌詞は秀逸。
 メルヘンな主題に、ブラックユーモア加味、しかもフランス・ギャルが実名で登場したりと、
 ファンタスティックな作品世界だ。

(2000.01.09)


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