「グラスホッパー」 特撮メイキング
特撮担当:我ジェット
山崎優監督作品の「グラスホッパー」に、特撮担当として参加させていただきました。
作品自体は2004年春に公開されましたが、ここで今更のように自分の仕事を振り返って見ようと思います。
本作品は、今更説明するまでも無い、日本が産んだ特撮ヒーロー「仮面ライダー」をモチーフにしたサスペンスアクションとでもいうべき作品です。
もちろん登場するライダーはじめ怪人などが数種登場するので、それらの造形やエフェクトなどをお手伝いさせていただきました。
プリプロダクション…
まずはシナリオを読んで各シーンのイメージを膨らませ、どこで特撮を使うかを検討します。
今回は、怪人の蝙蝠男、飛蝗男を造形・メイクなどで表現し、カメレオン女をデジタル合成で表現する事にしました。
また、ロケ地や予算の関係から、本格的なステージガン(撮影用の模造銃)が使えなかったため、市販のエアガン、モデルガンなどで代用しました。その為、薬莢、マズルフラッシュなどをデジタルで合成することにしました。
さらにデジタル処理で衝撃波や壁の亀裂などを加えて派手さを増す事もこの時点で決定しました。
副主人公と言える仮面ライダーのスーツに関しては、スキル不足もさることながら、監督の生み出すリアルな世界観に準じて、バイク用のプロテクターをほぼそのまま使用し、フルフェイスヘルメットにほんの少し手を加える程度にすることが決まっていました。
怪人のデザインを友人に依頼。ものすごくカッコいいけど今の自分のスキルで制作できないようなデザインが上がってきて嬉しいやら凹むやら。
蝙蝠男デザイン
飛蝗男デザイン
そして、いちばん手間が掛かりそうなデジタル処理、「カメレオン女がその能力で背景にとけ込むシーケンス」のテスト映像に取り掛かる。
同時進行で、ダメージ表現としてひび割れる壁のテスト。これも実験のくりかえし。
この段階で、本番どのようなアングルでとるか、現場での進行などを考えておきます。
プロダクション…
まずはヘルメット。
ライダーを演ずる役者さんが自ら行ったペイントの仕上げをして、バイザー部分を取り除き、代わりに内側からアクリルを埋め込みました。
役者さんの顔が透けないように、スモークアクリルの一層下にハーフミラーを仕込む。
最終的にはこんなん。歯を模したパーツは、上の歯の部分は最終的にオミットしました。
蝙蝠男・造形
これといった造形技術は持ち合わせてないので、今回は作れる範囲で作ることに決定。
被り物はでかくなって嫌だったので、頭部のマペットとして制作。
土台はこんな状態。スチロールのマネキン頭部にアルミ箔、ボール紙といった軽い素材で芯になる部分を貼り付けていく。
牙はパーティーグッズの変装用玩具をちょっと改造して貼りつけ。上顎と下顎をカッターで切り離し。
そこに軽量樹脂粘土を貼り付けてさらに芯を作りこむ。アルミ箔と割り箸などを芯に鼻の土台をつける。
さらに粘土を盛り付けて蝙蝠男のじか肌(?)の部分を造形。肌色に塗装。この時点で下顎をふたたび上顎にくっつける。
口パクができるように喉もとの部分を切り取っておく。
土台の体毛が生えている部分には、もちろん植毛技術なんてないので兎の毛皮を使用。
スキマの形に切り取って地道に貼り付ける。
手を入れてみる。ちゃんと動くようだ。
でも毛皮の貼り付けが結局間に合わず、現場で待ち時間のあいだにせっせと貼り付けてようやく完成した。
メイク関連
現場で特殊メイクと呼ぶのもおこがましいがそれに類するような事もやらせていただいた。
額にできた銃弾痕を、パーティーグッズ用のフェイクスキンというクリームでつくる。
なかなかリアルで気持ち悪い。
飛蝗男(人間体)の額から突き出た飛蝗の触角。
プラ棒、ストローなどでつくった触角を、前述のフェイクスキンで固定。
飛蝗男は当初マスクで制作する予定だったが、時間の都合で額を突き破って出てくる触角のみになってしまいました。
監督ごめんなさい…(涙
と、言うわけでプロダクション関連=制作で携わったのはここまでです。
実際、今回は銃のマズルファイアから飛び散る血煙までをCGと合成でやってるので、ポストプロダクション(編集、合成、仕上げ)のほうに物凄く仕事がまわってしまいました。そこでいろいろ問題も起こったのですが、それは次回のポスプロダクション編のメイキングで詳しく書こうと思います。