連続パロデイ小説

決戦前夜

かとうあきら

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第壱話

 

彼は今、とても悩んでいた。

なぜかというと、彼は一人だったからだ。彼は岩山の頂上に住んでいた。彼には、友達がいない。彼の悩みとは、友達がいないことだった。ついこの前まで、女と一緒に住んでいたが、逃げられてしまった。思えば自分勝手な女だった。かくて、彼は今も一人なのである。誰かと一緒に遊びたい、みんなの楽しい、あの笑顔の中に入っていきたい、俺も他人と話してみたい。

しかし、と彼はまたここでも悩む。いったい俺に、そんなことが出来るのだろうか、と。俺には友達がいない。だから、どうやって友達をしていいのか分からないのだ。何か、楽しい話題でもあればいいのだが。

そうだ、新しく開発した、この機械についてはどうだろう。そうだ、俺は何か作ることが好きなのだ。しかし、自分のことばかり話して、みんなとは話が合うのだろうか。一方的に喋るだけで、みんな俺の話なぞわかってくれないんじゃないか。どうせやつらは、暇さえあれば集団でへらへらしている低IQの馬鹿どもなのだ。

いや、いかんいかん、と彼は考え直す。こんなふうに相手を見下すから、俺には友達が出来んのだ。だから俺様はダメだというのだ。彼は果てしのない自己嫌悪の中にその身を埋める。そうだ、友達なんか要らないさ。あいつらは、この俺のように、悩むことすらしない、ただの痴れ者の集まりなのだから。そうして彼は、自分自身を無理に納得させる。

し、か、し。

彼は暗闇の中で考える。

しかし俺は、事実さびしいじゃないか。こんなにも人と一緒にいたいじゃないか。どこまで行っても自分に嘘をつくことなどできんのだ。俺も、みんなに会わないわけではない。たまには俺も山を下って、みんなに会いに行く事だってある。みな俺のことを知らないわけじゃないんだ。

では、ではなぜ俺には友達がひとりもいないのだろうか。やはり俺の、この臆病な自尊心のせいなのか。人にすがりつきたいと思ってるくせに、いざ人と一緒になると、とたんにそいつらが馬鹿に見えてしまう。でもわかっているのだ。俺はそうやって、やつらをけなすことでしか自分の存在がわからないんだ。

悪いのは、俺なのだ。いつもいつも。

本当に俺だけのせいなのか?

彼の頭に、「あいつ」の顔が思い浮かんだ。

「あいつ」は、みんなのことをけしかけて、いつも俺のことだけを仲間はずれにする。俺がみんなの中に入ろうとすると、いつもあの重たいパンチを俺の腹に叩き込んで、俺を吹っ飛ばしてしまうのだ。「あいつ」は、俺のことを、一方的に悪と見なして、俺の言うことに耳も貸さずに、近づくだけでパンチやキックを喰らわす。仲間はずれを造ることが奴の「正義」なのか。そうだ。いつも「あいつ」が、俺の、友達になろうとする目論見をぱあにしやがるんだ。「あいつ」は、俺の本当の名前も知らないくせに、俺のことを酷い仇名で呼びやがる。そうやって、みんなに俺のことを悪く印象付けようとしてるんだ。何で俺が、奴に、毎回あんな目に合わされなきゃならんのだ。理不尽だ。理不尽が正義なのか。ならばそんなものなど俺に入らない。

俺のことを「ばいきんまん」なんぞと呼ぶ、奴こそ悪魔だ。お前さえいなければ、俺は、もっと幸せに暮らせたんだ。

「見てろよ・・・・アンパンマンめ!

彼、ばいきんまんは、ばいきん城の中で新たな兵器の製作にとりかかった。

ばいきんまんの全身には、鈍い深紅のルサンチマンが、じんわりと光っていた。

 

つづく。

 

 

 

第弐話

 

彼は孤独だった。今、彼を突き動かしているのはアンパンマンへの怒りと憎悪であった。

彼の目の前には、新開発の兵器がその姿を見せつつある。完成は間近だった。こんなにも、巨大な兵器を、彼は一人で作り上げていた。しかし、誰も、彼の功労を誉めるものはいない、彼は孤独なのだ。

彼は、飛び散る溶接の火の粉の、一瞬の瞬きを見ながらふと思った。

俺はなにやってるんだ

こんなことして何になる。これでアンパンマンを攻撃したら、奴のことを崇拝している村の連中は俺のことを恨むに違いない。そしてまた俺は嫌われるのだ。もう一生友達などできないのだろうな・・・・・。

奴の思う壺だ。

 

彼は溶接の手をとめて、一息ついた。

 

彼はふと、ついこの前までこの城にいた女の事を思い出していた。

彼女の身体は真紅に燃えていた。初めて彼女を見たときに、そのあまりの紅さに彼は打ちひしがれたのを覚えている。この、すべてがくすんだ灰色の岩山に建つ城の中で、彼女だけが何か純粋なものの証に見えたのだ。彼と彼女はしばらく一緒に暮らしていた。

しかし、彼は、彼女とはそう長くはいられないということを、うすうす感じていた。

彼女は純粋すぎたのだ。

彼女と暮らして以来、彼にとって彼女の全ての行動、会話、精神構造が、自分とまったく異なっていることに気付いた。彼女は純粋である。純粋であるがゆえに、いつも必要以上に他人の顔色に気を使ってしまう彼とは、本来的に相容れない存在だったのだ、と彼は今考えていた。

彼女の純粋さは、彼にとっては「自分勝手」以外の何者でもなかったのだから。

「純粋」なんてそんなものだ、と彼は思う。

彼女は、他人の幸せを願うとき素直である。

しかし、自分の幸せを願うことにも素直なのだ。

そしてその純粋さ、素直さは、彼がどんなに追いかけても一生手に入らない彼岸の物なのだということを、彼自身が一番よく知っていた。

だから彼女は自分のもとを去ったのだし、彼もそのことをとがめようとはしなかった。

恋なんてものではない。そこには「他人」がいただけだったのだ。

一度だけ、彼女のことを愛してみたくなったことがある。追いつけないはずのものに、追いついてみたくなったのだ。いや、追いつけないことを証明したかったのかもしれない。

ある嵐の日、彼は彼女のことを押し倒した。

彼女はきょとんとして彼のことを見た。それだけで、彼は彼女から逃げ出したくなった。彼は何かをわめきながら(実際には一言も声は出さなかった。彼は心の中で叫んでいた)自分の欲望を彼女にぶつけようとした。

彼は少しの間もがき、そして泣いた。

彼は何も出来なかったのだ。

彼は相手に、自分の欲望をぶつける手段をもたなかった。

彼は、下界に住んでる村の連中が、どうやって愛し合い、子供を造るか知っていた。別段愛がなくてもその行為ができるということも知っていた。

しかし、いざ彼がその行為を彼女に向かってやろうとしたとき、彼は何も出来なかった。

 

彼には性器がなかったのだ。

 

紅い彼女は、彼の下敷きになって、何がどうなったのかわからず彼のことをじっと見ていた。

彼はどいてから、起き上がった彼女に小さい声で「すまん」といった。

俺は、人並みにも愛する資格がないのだな、と思った。その行為だけが全てではない、と自身を納得させながらも、少なからずプライドを持ったいた自分が、見下していた下界の連中よりもはるかに下等な生き物に思えた。

「ねえ、ばいきんまん」

紅い彼女が、下を向いたままの彼に言った。

「あたしあんたの事好きじゃない。あたしねえ、年中歯をむき出しにしてる人って嫌いなの」

といった。

純粋な彼女のことだ。それが正直な感想なのだろう。

ばいきんまんは、「あたし、食パンマン様と一緒に暮らすの」と言って出て行こうとする彼女に、小さな声で「ありがとう」といった。もちろん、彼女に聞こえるわけはなかったが。

それが、彼女との最後の思い出だった。

 

 

再び彼は溶接を始めた。

青く光る火花の洪水の中で、彼は考える。

俺は誰から生まれたのだろうか。

自分に生殖機能がない以上、親も同じように無性生殖なのだろうか。

細胞分裂。

そんな言葉が彼の頭をよぎった。冗談じゃない。それじゃあ本当の「ばい菌」ではないか。

「ばいきんまん・・・・・・か・・・・。」

溶接の手を止めずに、彼はつぶやいた。

自分とまったく同じ姿の親が、その親も、そのまた親も、みんな同じ姿の先祖が、どこからか自分のことを見ている気がして、彼の背中はかすかに震えた。

俺の先祖も、こうやって友達がいなかったのか。いや、そもそも先祖なんて本当にいたのか。そういえば、いつから俺は生きているのだろうか。何で俺だけこんな人里はなれたところにすんでいるのか。

なぜ、生まれてきたのか。

彼はそんな一切の記憶も、記録もないことに気付き戦慄した。自分がとんでもない怪物なんじゃないかと思った。

 

見上げると、兵器は完成していた。

みんなと仲良く暮らせれば、自分の過去も、消せると思った。未来に生きられると思った。自分がこれから生きていくための理由は、そこにしかないと思ったいた。

だから。

 

俺は本当にばいきんなのか。

この黒く、ぬらぬらと光る俺の身体がばいきんなのか。

みんなと仲良くするのがなぜいけないのだ。

あいつに、俺の人生を制限される覚えはない。あいつが邪魔さえしなければよかったのだ。あいつのせいだ。

アンパンマン、アンパンマン、アンパンマン、アンパンマン、

アンパンマン!

そうだ、奴に聞いてみよう。アンパンマンに。

俺のことを「ばいきんまん」と呼ぶあいつに。

今のところ、俺のことを一番よく知っているのは、悔しいがあいつだけだ。一緒にすんでいた彼女、ドキンちゃんさえ、俺の忌み嫌う仇名でしか呼ばなかったし、俺は何も教えなかった。

この兵器でやつを半殺しにした後、ゆっくり聞いてやろう。お前はなぜ俺を虐げるのか。お前は何者なのか。そして俺様は誰なのか。

 

兵器は完成した。

 

決戦は、明日だ。

 

「ばいきんまん・・・」

彼は寝床に入って、そう一人ごちた。

「そうさ、俺様はばいきんまんだ!

 

ばいきん城に、彼の孤独な笑いが響いていた。

 

つづく。

 

 

 

第参話

 

そして決戦の朝が来た。ばいきんまんは自分の造った兵器に乗り込み、出撃した。その兵器は、寸超18メートルの巨大人型ロボットである。

ばいきんまんの姿を模して造られたそのロボットは、なぜかマントをつけていた。

 

ばいきんロボは、下界にすむ連中の村の、少し手前の森にそっと着陸した。まだ早朝である。ここから頃合を見計らって村を襲おうと彼は考えていた。

今こそ出撃だ。ばいきんまんがロボの操縦桿を握ったとき、足元から声がするのを、マイクがキャッチした。声のほうにカメラアイを向けると、そこにはばいきんまんにも見覚えのある少年が立っていた。カバオである。

「ばいきんまーん」

カバオが声を潜めて、恐る恐る目前のロボットに向かって呼びかけていた。

「何だお前は。わざわざこの俺様に、踏み潰されに来たのか?」

ばいきんまんは不信さを隠せなかった。そんなばいきんまんを知ってか知らずか、カバオは続ける。

「ばいきんまん・・・・今日は、話があってきたんだ。僕の話を聞いてくれないかい?」

「はなし・・・だと?」

ばいきんまんは少し考えた。何か目論見があるにせよ、今は見たところカバオは一人だ。もし何かあればそのまま人質にすればいい。抵抗されたところで、カバ一匹、どうということはない。

「よし、入れ」

ばいきんまんは、自分のいる頭部のコクピットからはしごを降ろし、カバオに登ってくるよういった。

いったいどういう風の吹き回しだ・・・?

コクピットに入ってきたカバオを、ばいきんまんは椅子に縛り付けた。

「は、ははっ・・・なにも、しないって・・・」

カバオは、特に抵抗しなかった。

「で、話というのはなんだ」

ばいきんまんは、人前だとこのようにしか喋れないのである。

「実は・・・」

カバオが、もごもごと口をあけた。

「実は、みんなのことをいじめないでほしいんだ」

「ふん、いまさらこの俺様に命乞いか。無駄なことだ。」

「違うんだ。そんなことじゃない。みんなでもっと仲良く暮らすことは出来ないかなって、そう思ったんだ。」

カバオはまくし立てるように喋った。

「なん・・・だと?」

「ばいきんまんだって、一人でさびしいだろ?僕らと一緒に暮らそうよ。きっと、楽しいよ。」

何を言い出すんだ、こいつは。

「・・・何が一緒に暮らそう、だ。今まで散々、俺様を仲間はずれにしやがったくせに・・・何で今更なんだッ!」

半分は本気だった。しかしあとの半分は、もしかしたら、という期待が、ばいきんまんの中で膨らみ始めていた。

「仲間はずれがいけない事だって、僕気がついたんだ。君だって、みんながいっしょにいれば、悪いことはしないんだろう?本当は、さびしいんだろう!」

「う・・・ッ、そんな、そんな誘いに乗るかっ!俺は、極悪非道なばいきんまんなんだぞ!仲良くなんて、暮らせるわけが無い!」

「みんな、心から君のことをそういう風に思ってるわけじゃないんだ。ただ、いつも君が山から降りると、悪さばかりするから、仕方なくアンパンマンに来てもらってたんだ。」

「ウソだ!あいつは俺様のことを、仲間はずれにするために、いつも俺様を吹っ飛ばしていた!」

「でもみんなは、本当に君のこと嫌ってなんか無いさ。もっと素直になればいいんだよ!」

素直か・・・。確かに俺は、変に高慢な自尊心と、その裏返しの人恋しさで、卑屈になっていたのかも知れんな・・・。

ばいきんまんの心は揺らいだ。

「今日から、みんな一緒に暮らそうよ。僕がみんなのこと説得するよ、ばいきんまん」

ばいきんまんはカバオを睨みつけた。

「なぜ俺様に、そこまでしようとする・・・」

するとカバオは笑っていった。

「当たり前さ。友達なんだから。」

友達・・・。俺に、友達・・・。今まで欲しくて欲しくてたまらなかった、友達というモノ。

ばいきんまんは、カバオの縄をといた。

「すまなかったな・・・。お前の気持ちは解かったよ。だからもう・・・行ってくれ。」

カバオに背を向けて、ばいきんまんは言った。

ばいきんまんがカバオと顔を合わせないのは、自分の喜びを悟られないためであった。初めて出来た友達を前に、なんだか照れくさかったのだ。

ばいきんまんは、解かったような気がした。

今のこの気持ち。友達を作ろう、と、必死に意識していたいままでの自分が、なんだか不思議に思えた。

ばいきんまんは思った。

そうだ。友達は「作る」モノではなく、「なる」モノだったんだ。

彼にとって、それは初めての感情だった。

「なあ・・・」

ばいきんまんは、背後にいるはずのカバオに向かって声をかけた。

「なに?」

ばいきんまんは、その声に驚いた。声が、自分の頭のすぐ後ろで聞こえたのだ。

「えっ」

振り向こうとしたその刹那、ばいきんまんは脇腹の後ろに、何か、これまでに無い痛みを感じた。

それは外側からではなく、内側からの痛みだった。ものすごく熱い物と冷たい物を同時に触るような感覚が、痺れを伴ってばいきんまんの脇腹にじわじわ染み込んでいった。

後ろにいるカバオを見ようとしたが、ダメだった。振り向こうとして身を少しひねるだけで激痛が走る。

どさっ、と後ろで音がした。

腰をひねらず、身体ごと後ろを向くと、カバオが尻餅をついていた。その足は震えている。しかし、顔は笑っていた。

「おい、カバオ・・」

「ははははははははははっ!」

「どう、しちまったんだ?俺様は・・・。なんか、背中が猛烈に・・・痛いんだっ・・・がっ・・・!!」

はなして少しでも脇腹に力が加わると、また痛む。どうしたんだ?なんなのだ?

カバオはまだ笑っていて、そして言った。

「ははははハッ!やった・・・・やった!やったよ、あんぱんまん!これでボクも正義の味方だ!ばいきんまんを、一人でやっつけたぞ!もう間抜けなカバオじゃない!うはははははははっ!」

お前が、何をしたというのだ、いったい・・・?

しかし、ばいきんまんのその声は、口から出なかった。

ばいきんまんは、痛みのある背中の、脇腹の後ろあたりをまさぐってみた。

「−−−−っ!」

手に何か堅いものが触れた瞬間、体内の痛みは激しさを増した。そっと、その堅いものをつかむ。それは棒だった。棒が、俺の背中から生えている・・・?

「ぬ・・・がああああああああっ!」

ばいきんまんは、思い切りその棒を引き抜いた。脇腹から、何かがぬうっと抜ける感触がした。

ばいきんまんの手から離れ、床に落ちた棒切れは、ナイフだった。その刃と、柄の部分に、紫の血がべったりとついていた。

ばいきんまんは自分の手を見る。その手にも、紫の血がついていた。

・・・俺の血って、ムラサキ色してたんだな・・・・。

激痛で頭がぼんやりとして、そんなことを考えた。

「ワハハッ!死ねっ!バイキンめ!ばいきんまんめぇ!」

もはや気が狂ったように笑い呆けているカバオを、ばいきんまんは見た。

「なん・・・で・・・」

「はははははっ!ボクはなあ、いつまでも弱虫じゃないんだよ!僕だってみんなの事を守れるんだよ!どうだ!アンパンマン、見てるかい?はは、

そおだっ、恐れないで、みんなのタ・メ・に!」

カバオは立ち上がって踊りだした。

「ぐっがあああああああああああああああッ!」

ばいきんまんは、倒れそうな自分の勢い利用して、カバオに体当たりをした。

どむ!という鈍い音がしたと同時に、ばいきんまんは激痛にうめいた。

「オッ?」

バランスを崩したカバオが、よろけて足をつこうとした。が、そこには何も無かった。ばいきんまんがカバオを入れた入り口が、そのまま開けっ放しになっていたのだ。

「ええっ?」

カバオが、ばいきんまんの視界から消えた。一瞬後、はるか下の方からキャベツを叩き割るような音が聞こえた。

 

ばいきんまんは、這いずって入り口まで行き、そして下を見た。

 

「おおおおああああああああああああああああああああああ!

ばいきんまんは慟哭した。怒り、悲しみ、憎しみ、嫉妬、その他全ての負の感情が、彼の全ての内臓を絞り上げ、その激情が彼の口から叫びとなってほとばしる。

ノドが切れた。それでも叫びつづけた。

もはや声ではなく、血が出ていた。

しかし、彼は叫ぶのをやめなかった。

脇腹の痛みは、いつしか違うものへと変わっていた。

 

太陽は既に全身を現し、森が朝露できらきら光っていた。

下にあるカバオだったモノの顔は、もうどんな顔をしているのかすら解からない。

でも、多分笑っているのだ。

 

「ばいきんまん!」

そのとき、森中にこだまするような、凛とした声が響いた。

「よくも、僕の大切な友達を殺したなっ!」

朝日を背に、逆光になって飛んでくるその姿は、アンパンマンであった。

 

 

つづく。