ジニーの骨折

ハリー・ポッターと魔法の秘密kmyさんからご質問をいただきました。

まずは、以下の文をお読みください。

(略)ハァハァ喘ぎながら踵(かかと)をつかんだ。「踵(かかと)が折れたんだと思うよ。ポキッっという音が聞こえたもン」(5巻第35P581
... panting and holding her ankle.” I think her ankle's broken, I heard something crack,"P701

5巻35章の神秘部でジニーの骨折についてルーナが説明する場面です。

ご質問は『折れたのはankleだから、踵(かかと)ではなく、踝(くるぶし)ではないか。また、ankleには、足首とくるぶしの両方の意味があるが、足首骨折とくるぶし骨折は同じものかどうか』という内容でした。踵と踝はなるほど、漢字がよく似ていて混同しやすいかもしれません。

下肢の骨折については余り詳しくないのですが、学生時代の教科書を持ち出して調べてみました。

最初に足首骨折とくるぶし骨折についてですが、足首骨折に相当するのが、足関節骨折だと思われます。図1に示した赤斜線あたりの骨折全てが『足関節の骨折』になります。



この中にはくるぶしも含まれます。
脛骨の内果と腓骨の外果がくるぶしにあたります。
ですから、ankleの骨折つまり足首骨折にくるぶし骨折は含まれますが、イコールではありません。
『くるぶし骨折∈足首骨折
』ということでしょうか。

教科書的にはイコールではありませんが、同僚の理学療法士に聞いたところ、臨床ではほとんど『くるぶし骨折=足首骨折』のように使っているということでした。だいたいが、高いところから落ちて足首に負担がかかり過ぎた時に生じる骨折で、足関節を脱臼しつつ、くるぶしが折れるようです。


ジニーの場合、高いところから落ちたわけではないので、くるぶしとは限らないと思いますが、
ankleの骨折はほぼ『くるぶし骨折』と考えて良いと思います。


次に、踵(かかと)の骨折ですが、あまり臨床では『踵の骨折』という言い方はせず、
骨の名前のついた骨折か、『足根骨の骨折』と言っていますが、これは図2に示した
踵骨(しょうこつ)の骨折を指すのではないかというのが同僚たちの意見です。

この部分は足首骨折には含まれません。ですから、ankleの骨折はかかとの骨折ではありません。

以上のことから、kmyさんのおっしゃるように、ankleの骨折は踵(かかと)の骨折ではなく、踝(くるぶし)の骨折が正しいとおもいます。

ただ、理学療法士に聞いたところ、距骨(きょこつ)の骨折は微妙に『足首骨折』と
『かかと骨折』のイメージが重なるかもしれないということでした。
実際はほとんど距骨のみの骨折などあり得ないそうですが、粉々呪文が限定的に当たったのなら、距骨骨折もあり得るのではないでしょうか。

原書と邦訳が矛盾しない唯一つの骨折が距骨骨折だと考えています。

2006.3.5

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