36章

ついに、長い長い物語の結着がつく時が来ました。
ここまで来ても、私にはまだこの先の展開が読めず、タイトルの意味も、ダンブルドアの計画のFlaw(傷、欠点)なのか、ヴォルデモートのそれなのかわからず、とても不安でした。

ハリーの死んだ振りもそう長くは続けられないと思っていたら、確かめに来たのはナルシッサで、もしや?の期待通り、ナルシッサは虚偽の報告をしました。
ただただ、息子の安否を確認するためだけに選んだ選択だったかもしれませんが、結果的にはハリーが助かったので、良しとします。

クルーシオの呪文は、さすがに死んだ振りではごまかせないだろうと思っていたら、痛みは襲ってきませんでした。このからくりがどうにもわからなかったのですが、後の説明で納得しました。

ネビルは、本当にこれこそグリフィンドール生、というところを度々見せてくれましたが、帽子の中からグリフィンドールの剣を取り出し、見事ナギニの首を切り落とした姿は、とても感動的でした。素晴らしい成長振りで、見ていてとても励まされました。

ベラトリックスと闘っていたのが、ハーマイオニーとジニーとルーナだったので、かなりハラハラして見ていました。ジニーの危険にモリーが猛然とやってきた時も、正直、敵わないのではないか、モリーはここで命を落とすのではないか、と心配したのですが、底力を見せてくれました。母は強し、ということでしょうか。愛がベラトリックスの力を上回って良かったです。

ハリーの登場の仕方がドラマチックで、気分も高揚します。いよいよ、本当のクライマックスだと思いました。とりあえず新しい喪失もなさそうでホッとしました。

壁に張り付いて二人を見守る人々の前で、ヴォルデモートに向かってスネイプ先生のことを明かすハリーの言葉を、とても複雑な思いで読みました。
マクゴナガル先生を含め、スネイプ先生を攻撃して追い出した各先生方に、先生の潔白を証明する場面をどうしても設けて欲しいと願っていたので、まずは、少し救われる思いがしました。
同時に、子ども時代からほぼ生涯かけて、ハリーの母親を愛していた、などとハリーに言われたのは、恥ずかしかったろうなあ、と可哀想に思いました。この点を省いたら説得力を失くすので無理でしょうけど、そっとしておいてあげたい気がします。
結局、ハリーに言われるまで、ヴォルデモートはスネイプ先生の裏切りに気付いていなかったことはとても誇らしく思いました。ヴォルデモートを欺き通した先生の精神力に、本当に感服しました。
一方で、杖の本当の持ち主はスネイプ先生ではなく、武装解除したドラコだった、という事実に衝撃を受けました。スネイプ先生は、杖の所有権を奪われるためだけに殺されたと思っていましたが、それすら間違いというかヴォルデモートの勘違いだったとは!悔しくて悔しくて、呻き声を抑えることができませんでした。勘違いにしたって、グリンデルバルドや、ドラコの例のように、殺さずに所有権が移動できるのなら、ヴォルデモート自身が認める優秀なスネイプ先生を、殺さなくても良かったのに、武装解除だけで十分なのに…
また、事前の取り決めがあったり、既にダンブルドアが死にかけていた事実は皆に知れても、スネイプ先生は手を下したあの時、とても苦しんでいたわけですから、結局スネイプ先生は軽んじられた、との思いが私はどうしても拭えませんでした。

エルダーの杖の正しい所有者は、ドラコを負かしたハリーだった、と最後の最後に明かされました。7巻を通して、様々な謎が明かされていきましたが、まだこの時点でも驚かせてくれる事実が残っていることに驚きます。その杖を使っての魔法はハリーに効果を示さないようです。だから、森の中でのクルーシオの呪文に痛みは伴わなかったということでしょうか。てっきり、何か新しい能力を身につけたか、「生きていない」のではないかと疑ったりしてしまいましたが。

ヴォルデモートを倒した後の、歓喜の様子には、やはりたくさんの犠牲者達への想いが陰を落とし、ハリーの気持ちも複雑なようでした。私もそうでした。
朝日が燦々と降り注ぐホールの描写に、窓に板張りのされた叫びの屋敷で一人横たわるスネイプ先生を思い出さずにはいられませんでした。薄暗い部屋で板の隙間から射す光を先生は受けたのだろうか、と。
犠牲者達の遺体は別室に安置されました。ヴォルデモートすら。誰か、スネイプ先生も連れてきてあげてと、この後ずっと願い続けながら読みました。

ハリーが向かった校長室にスネイプ先生の描写はありませんでした。
スネイプ先生も立派な校長だったのですから、肖像画に加わって然るべきだと思うのですが、まだ時期が早いのでしょうか。ダンブルドアの時は死の直後に眠った肖像画が現れていましたけど。
部屋を去ろうとするハリーに、肖像画からおなじみの口調でひと言、嫌味の一つでも言ってもらえれば、心も晴れたかもしれません。
この肖像画ばかりが気になって、ハリーとダンブルドアのやり取りは、私にとって大変影の薄いものになってしまいました。


ん?結局タイトルは、どっちの計画だったのでしょうか??
ドラコの杖になったということがネックだったし、その点ダンブルドアも意図してなかったみたいだから、ダンブルドアの計画でしょうか?


2007.12.23

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