33章

32章を読み終わった後、5日経ってようやく読み始めました。
いつも通り、少し読んでは感想を書いていましたが、先生の記憶に入ってからは中断せず通して読みました。落ち着いて読みたかったので。

最初の場面、スネイプ先生のそばにひざまずいてじっと見てくれたハリーに感謝の気持ちでいっぱいになりました。先生が誰にも看取られず息を引き取ることを、私は以前からとても恐れていたのです。一人で逝って欲しくなかったのです。

Snape's body これは「スネイプの遺体」とでも訳されるのでしょうか。私にとっては決定的な言葉で、打ちのめされました。本当に見るのも辛い文字でした。

フレッドを囲むウィーズリー家の人々の姿に悲しみも新になります。
家族の苦しみが本当に辛いです。
そして同時に、叫びの屋敷で一人横たわるスネイプ先生の体を思い、どうしようもないやりきれなさに見舞われました。あのまま放置されてしまわないよう祈りました。

ルーピンとトンクスも犠牲になっていました。子どもが生まれた時、いつになく取り乱して喜びを隠さなかったルーピンの姿を思い出し、切なかったです。あの幼子が、ハリーと同じように遺されてしまったことも。が、二人の穏やかな顔には救われます。
それにしても、ローリングさん、主要人物2人って、いったいどこまでが主要人物なのかわからなくなってきました。マッドアイは違うとしても、フレッドとスネイプ先生で十分だと思ったのにまだ犠牲者が出るとは。

校長室への合言葉にまた涙します。スネイプ先生、自分の部屋に入るたびに「ダンブルドア」と呼びかけていたのですね。
肖像画の人物達はほとんど不在で、ダンブルドアもいなくてがっかりです。
スネイプ先生が、既にこの肖像画に加わっているのかどうかも知りたかったのに。


記憶に入る前、私の一番の関心事は、「リリーが出てくるかどうか」にありました。
私自身は「リリーを愛していた説」を採用していませんでした。私は、スネイプ先生が他人も自分も愛さない人のように感じていたからで、そんな先生が人間愛に目覚め、教師としての喜びを知る、という展開を好ましいと思っていたからです。
でも、さまざまな意見を聞くうち、「そうなのかなあ」と思わされていました。
7巻を読んでいる途中もそれを疑わせるような三兄弟の物語があったり、まるでリリーを連想させるパトローナスが出てきたりしていたし。

いきなりリリーが登場して、正直「やられた!」と思いました。 
私のスネイプ先生像は、本当に音を立てて崩れていくような感じで、つまりは幻滅したのだと思います。
せブルス少年は私が考えていたより、ずっと無邪気で純真で自分勝手で臆病でした。
この新しい人物像を自分が受け入れることはできるだろうか、と思いました。
でも、リリーの死を境に、先生が急激に成長していく様子に、また私の中の先生像が再構築されていきました。新しい先生は思っていた以上に素直で忠実で強くて人間味があり、そして一途でした。
先生の言動が支離滅裂で、一体何を考えているのか知りたくてブログまで作りましたが、もう考察の必要はなくなったと思いました。先生は終始一貫して「リリーの息子であるハリー」を守ってきたのでした。全てはリリーのために。誰も愛していないように見えたのは、リリーだけしか愛していなかったからだとわかりました。
人間愛に目覚めた先生、という妄想は崩れましたが、これほどまでに一人の女性を想い続けるひたむきさには、本当に心を打たれ、尊敬の念を覚えます。‘Always’には参りました。私は新しい先生像にもやはりとても魅かれます。
そして前章の解釈すら間違っていたことに気付きました。
‘Look...at...me...’という最後の言葉で、先生は何かを伝えようとしたのではなく、リリーの目に、見ていて欲しかったのですね。
これに気付いた時は、もう泣けて泣けて仕方ありませんでした。

細かい場面についてはいつかブログで語るつもりですが、印象に残った場面を二つ。
・ダンスパーティのあと、‘I am not such a coward’とのスネイプ先生の言葉に続いてダンブルドアが‘,I sometimes think we Sort too soon...’と言った時。
その言葉に打ちひしがれるスネイプ先生の姿が特に印象に残っています。
リリーがグリフィンドールに組分けされたときのセブルスのうめき声を思い出します。痛ましくて泣けてきます。
・スネイプ先生がシリウスの部屋で涙する場面。
鉤鼻の先から涙を滴らせてリリーがシリウスに宛てた手紙を読む姿に衝撃を受けました。先生の涙は初めて見ました。lots of loveの文字とリリーのサインが入った二枚目の手紙と写真のリリーの部分だけをスネイプ先生が大事そうに持ち去る姿も印象的でした。
そんなのでいいの?と哀れでなりません。リリーは幼なじみには手紙一つ残さなかったのでしょうか。ハリーの緑の目に看取ってもらったのと同様の切なさを感じました。

スネイプ先生の言動に一貫性があったとわかりましたが、逆にダンブルドアの言動が支離滅裂だと感じ始めました。リリーだけの命乞いをした若きセブルスを、非常に苦々しく叱ったダンブルドアが、結局ハリーを十分育ててからヴォルデモートに殺させることを意図していたなど、筋が通らないように思います。
でもまだ先の章を読まないことには、なんとも言えません。注意して読もうと思います。

なんとなく、スネイプ先生のひたむきな愛が利用された感が拭えませんが、これは私の英語力の問題かもしれないし、先の章次第で変わるかも知れないので、この気持ちは保留にしておきます。
それにしてもスネイプ先生は、多くの謎を一気に解き明かす随分大きな役割を与えられていたものです。まさか、リリーとペチュニアのことまでスネイプ先生が明かしてくれるとは思いませんでした。


ドアを開けて出て行ったのが最後の姿というのが、また辛かったです。
永遠に去ってしまったことを再認識して、深い悲しみに沈みました。


2007.12.12

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