私の愛機 デジタルカメラ比較レポート

現在は2機種とも手放したが、所有していた時に比較をしたので掲載する。

デジタルカメラの販売も銀塩を追い抜き、また性能もどんどんアップしている。
女性や子供でも気軽にデジカメを持ち、扱える時代になった。
デジタルカメラは大きくは、コンパクトタイプと一眼レフタイプの2種類に分化し、
一眼レフはプロからハイアマチュア向け、コンパクトタイプはビギナーからハイアマチュアと、
ターゲットが分かれ、また価格帯もハッキリと違っている。

今回、ハイアマチュア向けの5メガピクセル・コンパクトデジタルカメラ2種を
ユーザーの一人として比較してみることにした。
使用する機種は、
SONY Cyber shot DSC-F707
NIKON Coolpix 5700


両機とも有効画素数500万画素、レンズ一体型一眼デジカメのフラッグシップモデルである。
下記に両機の特徴を挙げてみる。

DSC-F707
COOLPIX 5700
500万画素 500万画素
CarlZeiss Vario-Sonnar f2.0-2.4 Zoom Nikkor ED f2.8-4.2
操作性の良いレイアウト and 回転レンズ 小型軽量ボディに高機能
暗闇での赤外線撮影 5点マルチフォーカスエリア
省電力スタミナ・リチウムバッテリー 極めて短いレリーズタイムラグ
1/1000秒〜30秒シャッター 1/4000秒〜8秒シャッター、5分までのBULB 
メモリースティック コンパクトフラッシュ
Zoom 38mm 〜 190mm(35mm換算) Zoom 35mm 〜 280mm(35mm換算)
Digital Zoom 2倍 Digital Zoom 4倍

両機とも色空間は、sRGB の様だ。
また、2種類のノイズリダクション機能もそれぞれ装備されている。


1.発色

DSC-F707 COOLPIX 5700
プログラムオート・マルチパターン測光
1/30 F2.2
プログラムオート・マルチパターン測光
1/4.6 F3.4

両機とも同じ条件で、三脚を使用し、プレステ2のコントローラを撮影した。
全体的にF707の方が明るい。逆を言うと5700の方が落ち着いている。
シャッタースピードからも分かるように、F707はレンズのF値の明るさが
速いシャッターを可能にしている。手ぶれなどの防止に非常に有利だ。
全体的に明るい露出になる傾向だが、この辺は好みの問題で良いだろう。階調も豊かだ。
5700は各色の色乗りが良く、派手さはF707ほどでは無いが、落ち着いた鮮やかさと
言えるだろう。しかし、ブルーのテカリ部分は白飛びが出た。露出は結構シビアかも。

色合いを見ると、赤、青、黄は、明るさの差こそあれ、それほど変わらない様だ。
一目見て違うと分かるのはグリーン。5700の方が現物に近い発色をした。
F707は緑が派手な色になるようにセッティングされているのだろう。
これは、木々の緑を撮した時に、緑が鮮やかに写る。
しかし若干、鮮やか過ぎるかも?っと思う時もあるのだが。


2.ズームレンズ

F-707は、カールツァイス光学5倍ズーム「バリオゾナー」、10群13枚。6枚羽根絞りを採用。
5700は、沈胴式8倍ズームニッコールEDレンズ、10群14枚。7枚羽根虹彩絞りを採用。

DSC-F707 COOLPIX 5700
最広角
最望遠

広角側と望遠側を、それぞれ同じ位置から撮影した。
デジタルズームは使わず、光学ズームのみの比較とする。
広角側は両機ともさほど変わらないが、5700の方がピントの範囲(被写界深度)が
若干浅いようだ。
対して、最望遠になると、5700の解像度は素晴らしい。
上の画像は10%のサイズに縮小したので解らないが、オリジナル画像では
鉄塔のガイシの艶、ボルト、ナットなどもしっかりと撮し込んでおり、
全体にシャープな像だ。
DSC-F707は、若干甘いが、それでも5700と比較しての話で、
両機とも、レンズ開発に力を入れただけあり、素晴らしいズームレンズだ。

ズーム域は、F-707が35mmフィルム換算で、38〜190mm。
5700が、35〜280mm。
広角側はさほど違わないが、望遠側では5700の方が一歩寄れるので有利だ。
特に野鳥撮影などでは、この差がかなりモノを言うと思う。


3.フォーカス

両機ともフォーカスは、IF方式を採用している。
フォーカスの精度はとても高いが、それぞれのクセが若干あるようだ。

DSC-F707
5700

上の画像は、某大型カメラ店の袋を、正面より若干右側斜めから撮影したもの。
両方ともプログラム・オートで、ストロボ使用。
フォーカスエリアは同じ場所を狙った。
両機ともピントをピシャリと合わせた。F-707はそのレンズの解放値の明るさと、
明るめの絞り設定のため、被写界深度が浅めになる傾向があった。
また、フォーカス位置よりも手前のほうにピントの幅が広くなる。
5700は、レンズ自体の暗さと、比較的絞り込もうとするために、
被写界深度がF-707よりも若干深い。また、若干後ピン傾向の感がある。


4.操作性

操作性に関しては、ユーザーの使い道や、好き嫌いなどに左右される事が多いと思う。
大切なのは、ユーザーが、自分のカメラに惚れ込み、操作に馴染むことだ。
しかしあえて、2機種の操作性に関して幾つかを挙げてみる。

(A) 起動時間
  両機ともカタログスペックで、2秒と同タイム。
  ただ、現在F-707は、F-717へバージョンアップし、起動1.4秒と高速になっている。
  起動時間の速さは、実際に使う時、大変重要なものだと思う。
  自然を撮る場合、刻々と変化する光線やシチュエーション。それらを素早く撮るために、
  素早く起動して撮影準備が出来る必要がある。自然は待ってくれないのだ。
  また人物や催し物などでも同じ事が言える。乳幼児の表情、運動会の一コマ、
  それらはチャンスを逃すと、もう戻ってこないのだ。
  そのためにも素早い起動時間がモノを言う。

(B) モニタの角度調節機構
  これは使い道によって、どちらが使いやすいかが変わってくるが、
  通常の場合はF-707の回転レンズによる本体の角度調節が使いやすいだろう。
  カメラを胸位置に構えて撮る場合や地面すれすれからの撮影は、
  カメラを構えたままでモニタの角度が一瞬で決められる。撮影者に無理な姿勢を
  負わせなくて良い。更に、この回転レンズは、モニタが上方向に77度、下方向に
  36度まで動く。背伸びをした状態での撮影から、地面すれすれまでを一瞬で
  カバー出来る。これは実際の撮影で大変有り難いものだ。

  5700の場合、モニタが本体横にアームによって開き、角度を変えることが出来る。
  モニタは270度回転するので、セルフ撮影で、モニタを確認しながら撮ることも出来る。
  このモニタは、使用しない時は裏返して本体裏面に収納出来るようになっているので、
  モニタの保護にも良い。
F-707 5700

(C) マニュアルフォーカス機能
  結論を言うと、F-707のマニュアルフォーカス機能の方が使いやすい。
  5700は、距離が絵とバーグラフで表され、直接距離を読むことが出来ない。
  これでは置きピンで撮りたい時に、大変困る。
  また、夜景で、無限大(∞)を確認したい時も、直接距離を読めないので、
  本当に∞になっているのか分からない。これは困る。
  やはり一眼レフの交換レンズの様に、距離が読めるようにしてほしいものだ。
  この価格帯のデジカメを買うユーザーは、まずカメラ初心者では無いと思うのだから、
  メーカーも「ターゲットユーザーを意識した物作り」をしてもらいたいと思う。

  F-707は、距離がメートル数値で表されるので、確認し易く使いやすい。
  しかし、1つ難点は、数値が数秒経つとモニタから消えてしまう。
  折角マニュアルフォーカスを使っているのだから、いつでも距離が確認できるように、
  他のデータと同じく距離表示は常時ONにしてもらいたい。

以上、操作性に関して、何点か挙げてみた。
かなりの高機能が両機とも凝縮されているが、ハイエンドユーザーをターゲットにしているのか、
初心者をターゲットにしているのか、ちぐはぐなところが多少見受けられる。
これはデジカメ特有なものだと思う。
まだまだデジカメは過渡期で、初心者向け、上級者向けという区別が曖昧なのが現状だ。
いっそ、ファームウェアで、「初心者」「上級者」と切り替えが出来るようになれば、
もっともっと、初心者にも上級者にも使いやすいカメラになると思う。
何しろ、銀塩で「数字による表示」に慣れた人が、「絵の表示」で使って下さいとされたら、
「テメ〜、なめんなよ!」っと、なるのでは? そう思うのである。


5.重量、形状

F-707 本体のみ 594g
5700 本体のみ 480g

約200g違う。これとボディの形状が相まって、F-707のほうがかなり重たく感じる。

F-707は、望遠レンズを着けた一眼レフカメラという感覚が濃い使用感のある重量だ。
持った感じも、かなり大きく感じるが、窮屈感は無い。
この重量と形状から、長時間手で持ったままの移動や、ストラップのみでは、かなり辛い。
ストラップを首から下げた場合も、レンズが重いため、前が下に向いてしまい、バランスが悪い。

5700は、さすがにカメラメーカーの設計だけあり、非常にバランスが良い。
持ったときも重量を感じさせない。「カメラ」という感覚を強く感じ、ファインダーを
覗きたくなる様な、絶妙な感じである。実際、私個人このカメラでは液晶モニターよりも、
ファインダーで撮影する方が、「撮っている」という雰囲気があり、とても楽しい。


6.夜景機能

夜景、星野写真の場合、レンズの性能、色再現性、シャッタースピードなどが影響する。

F-707 COOLPIX 5700

上の画像は両方とも、WBオート、8秒露出。
レンズのF値の違いがよく現れている。
夜景はレンズのF値の明るいF-707の方が、同じシャッタースピードでは有利だ。
色について見ると、F-707は全体的に緑が強く、フジのフィルム的な発色を示す。
対して、5700は非常に素直な、目で見た色に極めて近い発色で、CCDの素性の良さが感じられる。
色再現性に関しては 5700の勝利というところか。

シャッタースピードに関しては、

F-707 1/1000〜30秒
5700 1/4000〜8秒、5分までのBULB

両者、微妙に異なる。
8秒を過ぎると、5700はBULBでの撮影となる。
F-707は、30秒まで通常通りの撮影が出来る。
故に、30秒まではF-707が使い勝手がよい。
しかし、F-707はそれ以上の長時間露出が出来ない。
30秒を超える長時間露出は、5700の完全勝利だ。(不戦勝とも言える)

30秒を超える長時間露出の使い道だが、まず考えられるのは天体の撮影である。
これは赤道儀での追尾撮影に威力を発揮するだろう。
F-707の30秒では、天体撮影に限界があった。
5分までシャッターを開けておけると、撮影できる天体が飛躍的に多くなる。
レンズのF値の暗さを差し引いてもだ。ただ、熱ノイズ防止のためのノイズ除去機能が
撮影時間と同じ時間だけ処理をしなければならず、作業効率は大変悪くなるのだが。


次に、WBを変えて撮影してみる。
F-707は「室内」、5700は蛍光灯。どちらも近い色温度の設定である。

F-707 COOLPIX 5700

F-707は、緑が非常に強くなり、あたかもグリーンのフィルターをかけた様な色になる。
5700はほとんど変わらず、バックの夜空の赤みが多少とれたにとどまり、とても見やすい色合いになった。

最後に、両機のズーム、F値、露出をできるだけ揃えて撮影した画像を示す。
WBのみ、F-707がオート、5700が蛍光灯とした。

F-707 COOLPIX 5700
WB オート
露出 8秒
絞り F4.0
日時 21:39/MAR/2003
WB 蛍光灯
露出 8秒
絞り F3.9
日時 21:39/MAR/2003

以上から、夜景機能に関して、

1.レンズの明るさの違いから、同じ露出時間では、F-707の方が有利。
2.色再現性は、5700の方が有利。
3.露出時間は、5700の方が有利。

と、いう結論に達した。


7.結論

両機とも、それぞれ性格の違う、良いデジタルカメラである。
要は、そのカメラの得意とする領域を知り、
使いこなすことが大切である。
デジタルカメラは、まだまだ発展途上にある。
これからもどんどん、高機能、高性能になっていくだろう。
しかし、「カメラ」であることを忘れないで欲しい。
デジタルカメラは、何処まで行っても「カメラ」なのだ。
メーカーにはこれからも、「ユーザーにとって良いカメラ」を作って頂きたいと願う。

以上、このデジカメ比較は、ユーザーとして使用した、私個人の見解を書いたものである。
これにて、このページを終わる。