「トラック野郎 男一匹・桃次郎」    

 監督 鈴木則文   脚本 鈴木則文・掛札昌裕

 出演 菅原文太・愛川欽也・夏目雅子・若山富三郎・春川ますみ

    浜木綿子・清水健太郎・左とん平

    77年 東映

 

 数ある日本バカ映画の中でも、5本の指に入るバカ映画「トラック野郎」シリーズ。

その中でも、ひときわピュアなバカさ加減をみせているのがこの「男一匹・桃次郎」である。

 

 トルコ(ソープ)に自分専用の部屋をもつトラック野郎・一番星こと星桃次郎に菅原文太。

子だくさんの恐妻家ヤモメのジョナサンに愛川欽也。マドンナには今は亡き夏目雅子(カワイイ!)

脇を固めるのは、若山富三郎、堺正章、清水健次郎、春川ますみ、左とん平、笑福亭鶴光、

バッテン荒川、等々。

 

 徹頭徹尾、バカで下品。知性のカケラもない。むしろ、ただひたすらにバカなことを詰め込む

ことにのみ、力を尽くしているように思える。

そのいさぎよさは、いっそのこと気持ちいい。

 

 一升瓶に貯めた小便を警官に飲ませ、トルコで王様の格好をして豪遊し、

フグの毒に当たり泡を吹き、バッテン荒川とモチ呑み合戦をする。

今のイブシ銀からは、想像もつかないバカっぷりをみせる文太。

 

 ストーリーは毎回ほぼ同じで、マドンナに一目惚れし、がむしゃらにアタックをするが

結局フラれてしまい、失意の中、最後はマドンナのために愛車・一番星号を駆りピンチを

救うという、寅さんと同じパターン。

しかし「男はつらいよ」と「トラック野郎」が決定的に違うのは、桃次郎が菅原文太だという事。

顔で笑って、背中で泣いて。

マドンナのもとを去る文太のせつない背中が涙腺を緩ませる。

 

一番星ブルース。

 

 もののはずみで生れつき もののはずみで生きてきた

 そんなセリフの裏にある 心のカラクリ落とし穴

 

 

 黒い服を着たインテリで小奇麗な人たちが集まる渋谷のミニシアターでこそ、

こんな映画をかけて欲しい。

大爆笑するか、引きまくるか。

オシャレで、理屈っぽくて、独りよがりな映画だけが映画じゃない。

だってホントは、この映画に出てくるようなバカで、不器用で、下品で、自分の思うように

生きられない人たちのほうが多いんだから。